IPO

IPOにおける監査法人の役割、まだまだ続く監査難民

この記事でわかること

  • 監査法人はIPO準備でどんな役割を担うのか
  • なぜ「監査難民」が起きるのか
  • 監査難民の時代でも契約できる会社はある

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O f All株式会社の編集局です。役員報酬・株式報酬制度・ストック・オプション・資本政策・IPOに関するノウハウを発信しています。

IPO準備では、主幹事証券会社や証券取引所に目が向きがちです。しかし、実際に最初の段階で会社の実態を確認し、上場準備の入口を担うことが多いのは監査法人です。証券会社のIPO担当者数削減の流れとなっている現在では、むしろ監査法人の方が重要度を増しているとも言えます。また、JPX(日本取引所グループ)のIPO実務連携会議でも、「IPO準備においては監査法人のショートレビューが最初のステップとなる会社が多い。主幹事証券が入る前の最初の助言となる」と明記されています。

 

一方で、近年は「監査難民」という言葉が定着するほど、IPOを目指していても監査契約に進めない会社が増えています。これは一時的な話ではなく、監査品質に対する要求の強化や監査人材の不足といった構造的な要因を背景にしており、少なくとも短期的には簡単に解消しにくい問題です。

 

本記事では、ショートレビューそのものではなく、その前提として「監査法人はIPO準備で何を担うのか」「なぜ監査難民が起きるのか」「なぜ今後も続く可能性が高いのか」を整理します。

監査法人はIPO準備でどんな役割を担うのか

監査法人の役割は、単に財務諸表に監査意見を付すことだけではありません。IPO準備の実務では、監査法人は会計・決算体制・内部管理体制が上場会社として通用する水準にあるかを確認する立場にあります。JPXは、まだ監査法人や公認会計士の指導・監査を受けていない会社向けに、日本公認会計士協会の「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」を参照するよう案内しており、IPO準備における監査法人の関与が前提になっています。

また、IPOでは申請期の直前2期間について監査法人による監査証明が必要です。監査法人は「上場直前にだけ関与する存在」ではなく、IPOの可否を左右する前提条件を担う極めて重要な存在です。

実務上は、その入口としてショートレビューが行われることが多く、ここで

  • 事業計画の説得力
  • 経理処理
  • 管理体制
  • 労務リスク

などが確認されます。JPXのIPO実務連携会議でも、ショートレビューは主幹事証券会社が入る前の初期ステップであり、そのクオリティが重要だと指摘されています。

なぜ「監査難民」が起きるのか

監査難民が起きる理由は、単純に「IPOを目指す会社が多いから」だけではありません。

大きく言えば、監査法人が“受けたい案件を増やせない構造”になっているからです。

まず、金融庁の「🔗公認会計士・監査審査会(CPAAOB)の2025年モニタリングレポート」では、監査法人所属者は増えているものの、公認会計士登録者ほどは増えておらず、引き続き監査の担い手不足が懸念されていると明記されています。さらに同レポートは、監査業務の魅力低下や、監査基準・マニュアルの精緻化に伴う業務負担の増加などを、人材確保上の課題として挙げています。

次に、監査法人側では品質管理の強化が継続しています。2025年モニタリングレポートでは、大手監査法人で100人超の品質管理専門要員を配置し、契約管理、審査、監査サポートなどの機能を強化している事例が紹介されています。監査契約を増やすには、単に担当者を付ければよいわけではなく、こうした品質管理体制も同時に維持しなければならないため、受嘱判断は必然的に慎重になります。 監査実務担当者が契約したいと思っても品質管理部門がNGを出し監査契約が締結に至らないケースも発生しています。

さらに、上場会社等の会計監査を行うには、登録上場会社等監査人である必要があります。登録制度の下で監査品質を担保する流れが強まっていることも、監査受嘱を慎重にする方向に働きます。

この点は、金融庁の監査部会でも以前から共有されており、2021年の議事録では、IPOを目指す企業に監査難民が出ているとの報道があり、監査法人側もリスク評価を踏まえて受嘱判断をしているという発言が記録されています。つまり、監査難民は単なる噂ではなく、少なくとも制度側でも認識されてきた論点です。

ただし、監査難民の時代でも契約できる会社はある

こうした事情を踏まえると、監査難民は「もうすぐ解消する一過性の問題」と見るより、人材不足と品質管理強化の両方を背景にした、構造的な問題として考えた方が自然です。

もっとも、このような状況でも、すべての会社が一律に厳しいわけではありません。実務上は、

  • ビジネスモデルに独自性や成長性がある
  • 事業計画書がしっかり作り込まれている
  • 経営管理体制の整備方針が明確である(IPOに向けた準備姿勢が明確)

といった会社は、大手監査法人であっても監査契約に進むケースがあります。

つまり、監査法人は単に現在の整備状況だけを見るのではなく、会社の事業の魅力、今後の成長可能性、準備の本気度も含めて判断しているということです。

まとめ

IPOにおける監査法人の役割は、会計監査そのものにとどまりません。

実務では、ショートレビューを通じてIPO準備の入口を担い、監査契約を通じて申請期直前2期間の監査証明を支える、IPO準備の前提条件を握る存在です。

一方で、監査難民は、監査法人の気分で起きている問題ではありません。

監査人材の不足、品質管理の強化、登録制度の運用など、構造的な事情を背景に発生しており、少なくとも短期的に簡単に解消するとは考えにくい状況です。 

ただし、そのような環境でも、ビジネスモデルが秀逸で、事業計画書がしっかり作成されている会社は、監査法人から見ても魅力のある案件として評価されやすく、大手監査法人との契約につながる可能性があります。

だからこそ、ショートレビューそのものの議論に入る前に、

「監査法人に選ばれるために、会社として何を示せる状態にしておくべきか」

を理解しておくことが重要です。

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ここまで、IPOにおける監査難民について解説してきました。
本記事の内容がIPO準備を検討・実施している皆さまの参考になれば幸いです。

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