TOKYO PRO Market(TPM)上場と上場時のストック・オプション活用の留意点
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この記事でわかること
- TPM(TOKYO PRO Market)とは?
- TPMの主な特徴
- TPM上場時のストック・オプションの取り扱い
- TPM上場を目指す場合のストック・オプション設計上の留意点
著者プロフィール

O f All株式会社
代表取締役
福地 悠太
主に上場企業に対するストック・オプションの設計・導入支援、エクイティ・ファイナンスに関するアドバイザリー業務、M&Aアドバイザリー業務等に従事。証券株式会社を経て、再びコンサルティング業に戻り、株式報酬制度の設計・導入支援、役員報酬制度の設計、指名報酬委員会の設置・運用に係る助言業務等を行う。
近年、新規上場企業数が大きく増加しているTPM(TOKYO PRO Market)市場。
本記事ではTPM市場の特徴とTPMに上場する際のストック・オプション活用における留意点などを解説します。
ストック・オプションについて、詳しく知りたいという方は以下の記事をご確認下さい。
🔗ストック・オプションとは?基礎から種類・制度・選び方までわかりやすく解説
TPM(TOKYO PRO Market)とは?
TOKYO PRO Marketは、東京証券取引所が運営する株式市場の1つで、国内外のプロ投資家向けの株式市場です。成長力のある企業に新たな資金調達の場と他の株式市場にはないメリットを提供すること、国内外のプロ投資家に新たな投資機会を提供すること、日本の金融市場の活性化ならびに国際化を図ることを目的として創設・運営されています。
機動性・柔軟性に富む市場運営の実現を目指しており、投資家をプロ投資家に限定することにより新規上場の要件が他の一般市場に比べて緩和されていることが大きな特徴の1つです。
近年では新規に上場する企業が大幅に増えており、2020年に10社だった新規上場企業数は、2021年に13社、2022年に21社、2023年に32社まで増え、2024年には新たに50社がTPM市場に上場しました。
TPMの主な特徴
TPMでは、株主数や流通株式、利益額といった項目においてクリアしなければいけない形式基準がなく、上場を目指すにあたって、各企業ごとの状況に応じた柔軟なガバナンス設計が可能となっています。
また、上場前の監査を受ける必須期間は直近の1年間とされている他、上場申請から承認までの期間が10営業日とされているため、他の市場と比べてスピーディに上場まで到達できる点も企業にとって大きな魅力となる特徴です。
一方で、市場に参加する投資家はプロ投資家に限定されるため、他の一般市場に比べて市場参加者の絶対数が少なく、株式の売買は活発に行われてはいないのが現状です。
また、その他の主な特徴は下表のとおりです。
項目 | TOKYO PRO Market | 東証他市場 |
---|---|---|
開示言語 | 英語又は日本語 | 日本語 |
上場基準 | 形式基準:なし 実質基準:あり | 形式基準:あり(株主数、流通株式等) 実質基準:あり |
審査主体 | J-Adviser | 主幹事証券会社、東証 |
上場申請から上場承認までの期間 | 10営業日 (上場申請前にJ-Adviserによる意向表明手続きあり) | 2、3か月程度 (標準審査期間) |
上場前の監査期間 | 最近1年間 | 最近2年間 |
内部統制報告書 | 任意 | 必須 |
四半期開示(決算短信) | 任意 | 必須 |
主な投資家 | 特定投資家等 (いわゆる「プロ投資家」) | 一般投資家 |
🔗日本取引所グループ「TOKYO PRO Marketの主な特徴」より引用
TPM上場時のストック・オプションの取り扱い
近年のストック・オプションの発行実務においては、IPOの達成を権利行使条件に付していることが多くなっています。行使条件の定めとしては、「当社株式がいずれかの金融商品取引所に上場していること」といった規定となっていることが一般的であり、その点で言えばTPMも「いずれかの金融商品取引所」に該当します。
そのため、特段TPMを除外する文言を入れていなければ、TPM上場時にその他の行使条件を満たしていればストック・オプションの権利を行使することが可能となります。
また、権利行使ができるストック・オプション、特に税制適格ストック・オプションが発行されている場合、ストック・オプションの管理口座と株式を入庫する普通証券口座の2つを各付与対象者が証券会社に開設することになりますが、TPM市場に上場する株式の口座開設を取り扱う証券会社は限られるため、口座開設先となる証券会社の確保も必要となってきます。
TPM上場を目指す場合のストック・オプション設計上の留意点
TPM上場の際に発行してあるストック・オプションで、よく問題となるのは、権利行使をして株式を取得しても市場での取引が少ないため売却ができないといった点が挙げられます。
配当を出している場合などを除けば権利行使して株式を保有するメリットが少ないため、売却による利益を得られない状況では、ストック・オプションを付与された意義や報酬実感を得られなくなってしまいます。
そのため、ストック・オプションの権利行使により従業員等が取得した株式の出口(売却先)をあらかじめ確保しておくことなど、ストック・オプションを保有していることで受けられるメリットを制度に組み込んでおき、TPM上場時点でインセンティブとして機能するよう設計をすることや、そもそもTPM上場へのインセンティブではなく、その先のステップアップ上場などの次のExitに向けたインセンティブと位置づけ、ストック・オプションをTPM上場時点では権利行使できない設計にすることなど、状況や自社の中長期的な戦略、展望に合わせた形でストック・オプションを発行することが重要になります。
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ここまで、TOKYO PRO Market(TPM)上場と上場時のストック・オプション活用の留意点について解説してきました。
本記事の内容がストック・オプションを検討している皆さまの参考になれば幸いです。
O f All株式会社では、株式報酬制度やストック・オプションの設計・導入、役員報酬設計までトータルでご支援しております。未上場/上場、どのフェーズでも柔軟にお応え可能です。
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