報酬委員会とは?役割と設置の手続きやIPO準備との関連性まで解説

この記事でわかること
- 報酬委員会とは
- 報酬委員会の設置手続き
- 上場企業、上場準備企業の報酬委員会設置状況
- IPO準備段階における報酬委員会の設置検討
著者プロフィール

O f All株式会社
代表取締役
福地 悠太
主に上場企業に対するストック・オプションの設計・導入支援、エクイティ・ファイナンスに関するアドバイザリー業務、M&Aアドバイザリー業務等に従事。証券株式会社を経て、再びコンサルティング業に戻り、株式報酬制度の設計・導入支援、役員報酬制度の設計、指名報酬委員会の設置・運用に係る助言業務等を行う。
近年、上場企業及び上場準備企業での報酬委員会の設置が急激に増加しています。
本記事では、報酬委員会とはどのような役割を果たす機関なのか、といった基礎的な部分から、上場企業や新規IPOと報酬委員会の関連性まで解説していきます。
役員報酬制度について、詳しく知りたいという方は以下の記事をご確認下さい。
🔗役員報酬制度とは?全体像から設計方法・決定の流れやポイントまで解説
報酬委員会とは
報酬委員会とは、企業の取締役等の役員に対する報酬に関する事項の審議・決定を行う機関を指します。
主な審議・決定事項としては、
- 取締役の報酬等の額の決定に関する基本方針
- 役員報酬規程
- 毎期の取締役ごとの個別報酬額
などがあり、それらの事項に関する諮問・答申・承認を行うことが機関としての役割になります。
また、報酬委員会は会社の機関設計によって法的性格が異なり、「指名委員会等設置会社」の場合には、会社法上の必須要件を満たす必要がある法定委員会となり、監査等委員会設置会社または監査役会設置会社の場合は、法定の必須要件等がない任意委員会となります。
なお、法定委員会の必須要件と、任意委員会のコーポレートガバナンスコードにおける推奨要件は以下のとおりです。
法定委員会の必須要件 | 任意委員会の推奨要件 |
---|---|
・3人以上の委員で構成されること ・委員は取締役の中から、取締役会決議 によって選任されること ・委員の過半数が社外取締役であること 以上3点の全てを満たす | ・社外役員が少なくとも過半数である ・社外役員とそれ以外の委員が同数 であって委員長が社外役員である 以上2点のいずれかを満たす |
近年、コーポレートガバナンスコードにおける役員の報酬決定プロセスの客観性・透明性の確保や役員に対する適切なインセンティブ付けに関する要請に伴い、報酬委員会を設置する企業が急速に増加しています。
報酬委員会の設置手続き
報酬委員会の設置は、概ね以下の流れで進めていきます。
- 事務局メンバーの選定及び事務局の立ち上げ
- 委員会の諮問・答申・承認事項の検討及び決定
- 委員候補者の選定と構成の検討
- 初年度開催スケジュールの策定
- 委員会規程の作成
- 取締役会決議(規程の承認及び委員の選任)
上場企業、上場準備企業の報酬委員会設置状況
2025年4月時点の東京証券取引所の調査によると、既上場の企業においては全体の61.63%が法定または任意の報酬委員会を設置しており、市場区分で見るとグロース<スタンダード<プライムの順で設置率が高くなっています(※表①を参照)。
また、上場準備企業でも報酬委員会の設置は進んでおり、2023年および2024年の東京証券取引所新規上場企業(TOKYO PRO Market除く)においては、新規上場時点での報酬委員会設置率が50%台の中盤にまで上がっていることが分かります(※表②を参照)。
【表①】

【表②】

IPO準備段階における報酬委員会の設置検討
上記のデータからも分かる通り、上場準備段階での報酬委員会設置検討は何ら珍しくないことになってきています。その背景には、冒頭で触れたコーポレートガバナンスコードの要請に基づき、証券審査や取引所審査の中で「役員報酬の決定プロセスや役員報酬に関する基本方針についてガバナンスが確保されているのか」といったが視点での審査がより厳しくなっていることが考えられるでしょう。
上場準備のプロセスの中で、役員報酬に関する方針やルールを定めることの重要度は大きく増しており、報酬委員会の設置検討は避けて通れないテーマの1つになってきていると言えます。
まとめ
コーポレートガバナンスコードに端を発し、株主総会における役員報酬に関する質問の増加や、役員に対する不適切な株式報酬に関する株主代表訴訟事例が出てくるなど、役員報酬への関心は高まりを見せています。
このような環境下、報酬委員会はステークホルダー全体の利益に資する役員報酬制度を設計するための要としての役割を果たすことを期待されており、上場企業及び上場準備企業には、積極的かつ前向きな委員会の設置検討が求められています。
役員報酬の相場の情報をお探しなら
役員報酬の相場等をお探しなら弊社が提供する「役員報酬データベース」を一度、ご確認下さい。
本データベースは有価証券報告書等にて公開されているデータをもとに網羅的に作成しており、下記のような情報をご確認いただけます。
- 取締役・社外役員・監査役(監査等委員)の「報酬等の総額の平均」
- 取締役・社外役員・監査役(監査等委員)の「固定報酬・業績連動報酬の総額の平均」
- 取締役・社外役員・監査役(監査等委員)の「株式報酬の総額の平均」
- 取締役・社外役員・監査役(監査等委員)の「売上に対する報酬総額の割合」
- 取締役・社外役員・監査役(監査等委員)の「営業利益に対する報酬総額の割合」
- 報酬における構成比率データ
「役員報酬制度設計 解説ガイドブック」に体系的にまとめています
役員報酬について、基本的なポイントから各制度についての詳細まで、体系的にわかりやすくまとめた「役員報酬制度設計 解説ガイドブック」を無料配布しております。
無料でダウンロード可能ですので、役員報酬について情報収集されている方は、一度、下記からご確認下さい。

役員報酬制度・株式報酬制度のお悩みをご相談ください
ここまで、報酬委員会について解説してきました。
本記事の内容が役員報酬制度設計などを検討している皆さまの参考になれば幸いです。
O f All株式会社では、役員報酬制度の設計・導入はもちろん、株式報酬制度、ストック・オプションの設計・導入までご支援しております。未上場/上場、どのフェーズでも柔軟にお応え可能です。
役員報酬・株式報酬制度についてお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
また、下記にて弊社の会社案内資料も配布しております、ご参考までにご確認いただけましたら幸いです。お急ぎの方はオンラインでの無料相談も承っておりますので、ぜひご活用ください。