IPO

IPO(上場)の条件とは?上場基準も含めて解説

この記事でわかること

  • 「時価総額」と「実質基準」を理解する
  • まず、「時価総額」をざっくりどう考えるか
  • 4市場を実務的に比べるとどう違うか

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上場を目指すとき、多くの経営者がまず気にするのは「数字の基準をクリアできるか」です。

 

株主数、利益、時価総額。確かにこれらは避けて通れません。しかし実際の上場審査では、数値基準を満たすだけでは不十分で、ガバナンス体制や内部管理の整備状況まで厳しく問われます。

 

東証スタンダード市場、東証グロース市場、名証メイン市場、TOKYO PRO Marketの4市場は、それぞれが重視するポイントが大きく異なります。この記事では、時価総額の考え方と実質基準の違いを軸に、各市場の特徴を整理します。

「時価総額」と「実質基準」を理解する

「上場基準」と聞くと、株主数や利益、時価総額などの形式基準を思い浮かべる方が多いと思います。
ただ、実務上はそれだけでは不十分です。東京証券取引所も名古屋証券取引所も、数値基準に加えて、継続性、収益性、内部管理体制、開示の適正性といった実質面を見て上場審査を行います。つまり、数字を満たせば自動的に上場できるわけではない、というのが大前提です。

この記事では、次の4市場を取り上げます。

  • 東証スタンダード市場
  • 東証グロース市場
  • 名証メイン市場
  • TOKYO PRO Market

形式基準を細かく並べるよりも、時価総額の考え方実質基準の違いが分かるように整理します。

まず、「時価総額」をざっくりどう考えるか

時価総額は、簡単に言えば市場から見た会社の値段です。
IPO初心者の方にはイメージしにくいので、かなり単純化して、PERを10倍と仮定すると、

  • 時価総額40億円
    → 最終利益のイメージは 4億円程度
  • 時価総額100億円
    → 最終利益のイメージは 10億円程度

となります。もちろん実際には、成長性や業種によってPERは大きく変わるため、この通りになるわけではありません。ただ、水準感をつかむには、このくらいの置き方が分かりやすいと思います。

東証スタンダード市場

一定の規模に加え、「上場会社としての管理体制」をかなり明確に求める市場

東証スタンダード市場では、新規上場時に流通株式時価総額10億円以上流通株式比率25%以上が求められます。
したがって、単純に考えると、会社全体の時価総額としては少なくとも40億円程度が一つの目安になります。PERを10倍と仮定すれば、最終利益4億円程度の水準感です。

ただ、東証スタンダード市場の特徴は、単なる数値基準だけではありません。
東証では、コーポレートガバナンス・コードについて、

  • 東証グロース市場は「一般原則のみ」
  • 東証スタンダード市場は「プライム市場向けを除く、すべての原則・補充原則」
  • 東証プライム市場は「プライム向け項目を含めたすべて」

という整理になっています。

つまり東証スタンダード市場は、基本的なガバナンス体制、取締役会のあり方、開示姿勢まで含めて、“上場会社としての管理体制”をかなり明確に求める市場です。

そのため東証スタンダード市場は、一定の規模があり、事業が安定しているだけでなく、ガバナンスや内部管理の基本形も整っている会社に向いている市場だと整理できます。

東証グロース市場

管理体制よりもまず「高い成長可能性」、ただし上場後のハードルは上がっている

東証グロース市場では、新規上場時に流通株式時価総額5億円以上流通株式比率25%以上が求められます。
単純化すると、会社全体の時価総額としては少なくとも20億円程度が目安になります。PERを10倍とすれば、最終利益2億円程度の水準感です。

ただし、東証グロース市場で最も重視されるのは、今の利益水準よりも高い成長可能性です。
東証の上場ガイドでも、東証グロース市場では主幹事証券会社が申請会社の高い成長可能性を評価して報告する仕組みになっています。コーポレートガバナンス・コードの適用範囲も東証スタンダード市場より軽く、東証グロース市場は一般原則のみが説明対象です。

この点でも、東証グロース市場は管理体制の完成度より、まず成長性の説明に比重が置かれている市場と理解すると分かりやすいです。最近は、いわゆる時価総額100億円問題があり、東証はグロース市場について、上場5年経過後に時価総額100億円以上とする上場維持基準の見直しを進めています。

これは新規上場基準ではありませんが、上場時点から「将来100億円規模まで伸びるストーリー」を強く意識せざるを得ない環境になっています。
PERを10倍と仮定すると、100億円は最終利益10億円程度の水準感です。

名証メイン市場

時価総額は低めだが、「安定した経営基盤」が前提になる市場

名証メイン市場では、新規上場時の形式基準として会社全体の時価総額10億円以上が求められています。
この水準感は、かなり単純化すると、PER10倍なら最終利益1億円程度です。東証スタンダード市場との大きな違いです。
東証スタンダード市場は流通株式時価総額10億円以上+流通株式比率25%以上なので、会社全体では40億円程度が必要になりますが、名証メイン市場は会社全体の時価総額10億円以上です。名証はメイン市場を、「安定した経営基盤を確立し、一定の業績により市場から評価されている会社の市場」と位置づけています。


この表現から分かるとおり、名証メイン市場でも当然、実質審査の中で継続性、収益性、管理体制、開示体制は見られますが、東証スタンダード市場のように市場区分ごとのコーポレートガバナンス・コードの適用範囲の差
が前面に出ているわけではありません。
実務上は、東証スタンダード市場ほど“コーポレートガバナンス・コード対応を前提にした管理体制整備”を強く意識するというより、まず安定した経営基盤と一定の実績を備えているかを見る市場、と捉えると分かりやすいです。

TOKYO PRO Market

数値基準ではなく、J-Adviserが支えることが前提の市場

TOKYO PRO Marketは、他の市場とは考え方がかなり違います。
東証の公式説明では、TOKYO PRO Marketには形式基準(数値基準)がありませんその代わり、J-Adviser制度を採用しており、J-Adviserが上場適格性を調査・確認する仕組みです。TOKYO PRO Marketは「時価総額がいくらあれば行ける市場か」という市場ではありません。

J-Adviserがその会社を支えられるか、上場適格性を確認できるかが大きなポイントです。TOKYO PRO Marketは一般投資家向け市場ではなく、特定投資家向け市場です。

そのため、一般市場のように「時価総額○億円以上」という発想で見るより、どのJ-Adviserが付き、どのように上場後も支援するかがより重要な市場です。

4市場を実務的に比べるとどう違うか

かなり簡潔にまとめると、次のようになります。(TOKYO PRO Marketは除く)

東証スタンダード市場東証グロース市場名証メイン市場
時価総額目安40億円IPO後5年以内に時価総額100億円10億円
税引後利益目安
(per10倍として)
4億円IPO後5年以内に10億円1億円
ガバナンス体制厳しく確認されるスタンダードほどの確認ではない東証スタンダードに近いスタンス
コーポレートガバナンス・コードプライム市場向けを除く、基本原則・原則・補充原則まで求められる基本原則のみ東証スタンダードとほぼ同様の扱い

上場基準を考えるとき、形式基準だけを見ていると実務ではズレます。
大事なのは、時価総額をどう見る市場なのか、そしてその市場が実質的に何を重視しているのかを理解することです。

  • 東証スタンダード市場は、流通株式ベースで見たうえで、安定性と管理体制をしっかり求める市場
  • 東証グロース市場は、高い成長可能性と将来の時価総額拡大が強く問われる市場
  • 名証メイン市場は、会社全体の時価総額10億円を前提に、安定した経営基盤を重視する市場
  • TOKYO PRO Marketは、数値基準よりもJ-Adviserの関与が重要な市場

という理解で整理すると分かりやすいと思います。
特に最近は、東証グロース市場の時価総額100億円基準の議論もあり、「上場できるかどうか」だけでなく、「上場後もその市場にふさわしい会社であり続けられるか」まで含めて、市場選択を考える必要があります。

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ここまで、IPO(上場)の条件や上場基準について解説してきました。
本記事の内容がIPO準備を検討・実施している皆さまの参考になれば幸いです。

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