事業計画書は「未来の数字」ではない IPOを目指す会社が最初に整えるべき“成長の設計図”

この記事でわかること
- ストーリーと数字がつながっていない計画は、外部に伝わらない
- KPIが「成長のハンドル」になる
- 監査法人・主幹事証券会社の契約に効くのは、実は“数字の作り方”
- 各種説明資料と成長可能性資料
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O f All株式会社
編集局
IPO専門家
O f All株式会社の編集局です。役員報酬・株式報酬制度・ストック・オプション・資本政策・IPOに関するノウハウを発信しています。
これからIPO(株式上場)を目指す会社にとって、事業計画書は避けて通れない資料です。ただ、「売上と利益を3年分並べた資料」を作ればよい、という話ではありません。事業計画書は、社内のためだけの資料ではなく、監査法人や証券会社、取引所、そして上場後は投資家に向けてまで、一気通貫で使われる“会社の説明書”になります。
特に最近は、いわゆる「時価総額100億円問題」が話題です。グロース市場では、上場後に企業価値(時価総額)が十分に伸びない会社が一定数あることが課題として整理され、成長力の“見える化”が強く求められています。だからこそ、上場できるかだけでなく「上場後に成長し続けられる会社か」が、早い段階から見られています。
ストーリーと数字がつながっていない計画は、外部に伝わらない
社長が描くストーリー(市場の課題、勝ち筋、競争優位)はとても大事です。
でも、外部の人(監査法人・証券会社・取引所)は、そのストーリーを「気持ち」ではなく「証拠」で見ます。その証拠が数字です。
たとえば「プロダクト改善で顧客満足が上がる」というなら、解約率(やめる割合)が下がる、継続率が上がる、追加購入が増える……といった“数字の動き”が計画の中に入っている必要があります。
逆に、数字だけを並べても「なぜその数字になるのか」という物語がないと、説得力が出ません。
ストーリーが数字に落ちていて、数字がストーリーで説明できる。この往復ができている事業計画が強いです。
KPIが「成長のハンドル」になる
売上や利益は最終結果です。けれど、経営が日々コントロールできるのは、もっと手前の数字です。そこで重要になるのがKPI(重要な管理指標)です。売上は分解できます。たとえば、
- 顧客数
- 顧客1人あたりの単価
- 継続率(どれだけ続くか)
さらに顧客数は、
- 問い合わせ数
- 成約率(問い合わせが契約になる割合)
のように分解できます。 こうして分解すると、「どこを伸ばすのが成長戦略なのか」「どこがボトルネックなのか」がはっきりします。KPIが決まっていない計画は、成長のハンドルがない状態です。監査法人も証券会社も、ここをかなり重視します。
監査法人・主幹事証券会社の契約に効くのは、実は“数字の作り方”
IPO準備では、監査法人との監査契約、そして主幹事証券会社(IPOを取りまとめる証券会社)との契約が大きな山場になります。
ここで事業計画の質が効いてきます。なぜなら、彼らは「売上が伸びる予定」かどうかよりも、
- 前提が現実的か
- 会社の体制(人・仕組み・会計処理)が成長スピードに追いつくか
- 計画が崩れたときに、どこが原因でどう立て直すか(KPIで説明できるか)
を見ているからです。
事業計画が荒いと、監査法人側はリスクを高く見積もりやすく、契約が進まない/条件が厳しくなる(報酬やスケジュール含む)といった実務上の影響が出ます。主幹事証券会社も、引受審査で“成長の筋”が弱いと判断すれば、そもそも主幹事として引き受けにくくなります。
各種説明資料と成長可能性資料
なお、IPOに関連して、事業計画書と関係が深い資料に大きく2種類あります。
①各種説明資料(IPO申請時に提出する“審査用の資料”)
「各種説明資料」は、グロース市場へ新規上場申請する会社が、取引所に提出する資料です。位置づけとしては、有価証券上場規程施行規則の提出書類で、取引所審査などに用いられます。特徴はシンプルで、審査のための資料であり、原則として外部に公開されないという点です(いわば“審査に耐える説明書”)。
また、項目の多くは、既にある社内資料等の写しで代替できることも明記されています。つまり、事業計画書が社内の設計図なら、各種説明資料はそれを取引所審査向けに「根拠まで含めて並べ直したもの」です。
②成長可能性資料(上場後に市場へ説明し続ける“投資家向けの開示資料”)
一般に「成長可能性資料」と呼ばれるのは、グロース市場で求められる 「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示資料を指すことが多いです。これは投資家の合理的な投資判断に資するため、継続的な開示が求められるという整理になっています。様式は決まっておらず、決算説明会資料などに含めて開示することも可能とされています。
要するに、各種説明資料が「審査相手(取引所等)」に向けた資料なのに対し、成長可能性資料は「市場(投資家)」に向けて、上場後も説明し続ける資料です。
- 各種説明資料:上場審査に耐えるため(非公開が前提)
- 成長可能性資料:投資家に理解してもらうため(公開が前提、継続更新が前提)
事業計画書は“成長の設計図”であり、契約と審査と開示をつなぐ起点
事業計画書は、未来の損益計算書(PL)ではありません。
成長の道筋を、ストーリーとKPIで説明できる形にした「成長の設計図」です。
そしてこの設計図の質は、
- 監査法人の監査契約
- 主幹事証券会社の主幹事契約
- 取引所審査(各種説明資料)
- 上場後の投資家向け説明(成長可能性資料)
に、一本の線としてつながって影響します。
だからこそ、社内で完結する“都合の良い計画”ではなく、外に出しても同じロジックで説明できる計画を作ることが、IPO準備の最初の勝ち筋になります。
そして、事業計画書はIPO以外でも“効く”
ここまでIPOとの関係を中心に説明してきましたが、事業計画書の重要性はIPOに限りません。実は、経営のあらゆる重要局面で、事業計画が基礎になります。
①銀行融資の場面
銀行が見るのは、「将来返済できるかどうか」です。その判断材料は、
- 将来のキャッシュフロー(お金の流れ)
- 事業の安定性
- 成長の見通し
です。つまり、事業計画は融資判断の前提になります。数字の根拠が曖昧であれば、金融機関は慎重になります。逆に、KPIと資金計画が整合していれば、説明は格段にしやすくなります。
②業務提携・資本提携の場面
業務提携や資本提携を検討する際、相手企業や投資家が知りたいのは、
「この会社はどこへ向かっているのか」
「一緒に組むと、どんな未来が描けるのか」
です。事業計画が整理されていなければ、自社の成長ストーリーを共有できません。提携とは、自社の未来像を相手に理解してもらう行為です。その共通言語が、事業計画書です。
③株価算定(バリュエーション)の基礎
企業価値の算定は、将来の利益やキャッシュフローをもとに行われます。
- IPO時の想定時価総額
- 増資時の株価
- M&A時の評価額
これらはすべて、将来計画が前提になります。将来の数字に説得力がなければ、企業価値は保守的に見積もられます。
IPOについてのお悩みがあればご相談ください
ここまで、事業計画書について解説してきました。
本記事の内容がIPO準備を検討・実施している皆さまの参考になれば幸いです。
また、O f All株式会社では、IPOを目指す、目指そうとしてる企業様に向けて無料相談を実施しております。
「IPOに関する悩みを専門家へ相談したい」等のご要望がございましたら、お気軽にご相談ください。
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