今、内部監査を“外部の専門家”に委ねる会社が増えている理由

この記事でわかること
- まず整理しておきたい、内部監査の2つの役割
- トレンド①:内部監査に求められる水準が明らかに変わった
- トレンド②:上場から時間が経った会社ほど、内部監査の課題が表面化している
- トレンド③:東証も“内部監査の外部活用”を選択肢として示している
- トレンド④:コーポレートガバナンス・コードが示す方向性
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O f All株式会社
編集局
IPO専門家
O f All株式会社の編集局です。役員報酬・株式報酬制度・ストック・オプション・資本政策・IPOに関するノウハウを発信しています。
相次ぐ上場会社の不祥事が変えた、内部監査の新しいスタンダード。
ここ数年、上場会社による不祥事が相次いで発生しています。
そのたびに設置される第三者委員会の報告書を読み進めると、ある共通した傾向が浮かび上がります。
多くのケースで問題とされているのは、内部監査という仕組みが存在していなかったことではなく、内部監査が本来期待される役割を果たせていなかったこと です。
この現実が、いま多くの会社に重く受け止められています。
こうした反省を背景に、内部監査の在り方そのものを見直す動きが、ここ数年で加速しています。
その象徴的な変化の一つが、内部監査を社内だけで完結させず、外部の専門家を活用する会社が増えていること です。
これは一時的な流行ではありません。
IPO審査の実務、コーポレートガバナンス改革、そして不祥事の教訓を踏まえ、「内部監査には外部の視点を取り入れるべきではないか」という考え方が、実務上のトレンドとして定着しつつあります。
この流れは IPO 準備会社だけの話ではありません。むしろ近年は、上場から年数を重ねた既上場会社ほど、このトレンドと無関係ではいられなくなっています。
まず整理しておきたい、内部監査の2つの役割
内部監査と一言で言っても、実務上は大きく次の2つの領域があります。
業務の内部監査
業務の内部監査は、業務が有効かつ効率的に行われているか、法令や社内規程が遵守されているか、不正や不適切な業務運営が行われていないかといった点を、会社全体を横断して確認するものです。
金融商品取引法に基づく内部統制(J-SOX)の内部監査
もう一つが、金融商品取引法に基づく内部統制、いわゆる J-SOX です。
こちらは 財務報告の信頼性を確保すること を目的とし、全社統制、業務プロセス、IT統制などの整備・運用状況を評価します。
多くの会社では、この2つを内部監査部門が担っています。本記事では、これらをまとめて「内部監査」と呼びます
トレンド①:内部監査に求められる水準が明らかに変わった
内部監査を巡る議論で共通しているのは、
「とりあえずやっていればよい」という時代は終わった という点です。
- ガバナンス強化への社会的要請
- 不正・不祥事に対する厳しい視線
- IT化・データ活用の進展
- グループ化・海外展開による監査範囲の拡大
こうした変化により、
内部監査に求められる 専門性・独立性・網羅性 は、確実に一段引き上げられています。
トレンド②:上場から時間が経った会社ほど、内部監査の課題が表面化している
近年公表された不祥事を振り返ると、
IPO直後の会社よりも、上場から10年以上経過した会社で発生しているケースが目立ちます。
その背景には、
- 内部監査が前年踏襲・形式的な運用になっていた
- 組織拡大に監査リソースが追いついていなかった
- IT・海外・専門領域を十分にカバーできていなかった
といった構造的な問題があります。
内部統制や内部監査は、構築した瞬間が完成ではなく、時間の経過とともに劣化するもの です。
この「上場後の劣化」をどう防ぐかが、既上場会社にとって重要なテーマになっています。
トレンド③:東証も“内部監査の外部活用”を選択肢として示している
東京証券取引所の新規上場ガイドブックでは、内部監査体制について、
「その他、内部監査業務をアウトソーシングすることも考えられます。」
と記載されています。
あわせて、外部に任せきりにするのではなく、経営陣が内部監査の重要性を理解し、主体的に関与しているかどうかが確認されるとされています。
ここから読み取れるのは、重視されているのは「内製か外注か」ではなく、内部監査が実質的に機能しているかどうかという点です。
トレンド④:コーポレートガバナンス・コードが示す方向性
コーポレートガバナンス・コードでも、取締役・監査役が必要に応じて外部専門家の助言を得ることが前提とされています。
内部監査についても、取締役会・監査役会との連携を通じて、ガバナンスに実効的に活かすことが求められています。
ここでも重視されているのは、専門性・独立性・実効性 です。
最近の実務で見られる内部監査アウトソーシングの姿
こうした背景から、実務の現場では、内部監査の一部または全部を外部の専門家に委ねる会社が増えています。
- J-SOXやIT統制など、専門性が求められる領域のみ外部を活用するケース
- 監査対象が一時的に増える局面で外部を活用するケース
- 内部監査機能全体を外部に委ねることで、体制を安定させているケース
会社の規模や内部体制に応じて、部分的な活用から全面的な活用まで、さまざまな形が取られている のが実態です。
共通しているのは、内部監査を社内だけで抱え込まず、外部の専門性や客観性を取り入れることで、監査の実効性を高めようとしている点 です。
第三者委員会の報告書に何と書かれるか
近年の上場会社の不祥事を受けて公表された第三者委員会報告書では、繰り返し次のような指摘がなされています。
「内部監査が十分に機能していなかった」
「内部監査が形式的なものにとどまっていた」
重要なのは、これらの会社の多くで 内部監査という仕組み自体は存在していた という点です。
それでも、実質的な牽制機能としては十分に機能していなかった。この事実が、内部監査の在り方を根本から問い直しています。
こうした不祥事の積み重ねが、本記事で見てきた 「内部監査アウトソーシングが広がるトレンド」 を後押ししているのは間違いありません。
社内だけの視点や体制では、問題の兆候を見逃してしまうのではないか。内部監査の専門性や独立性が、組織の中で弱まっているのではないか。確かに社内の内部監査要員では、経営陣に指摘することが難しい場面も多いかもしれません。
そうした問題意識の中で、外部の専門家の視点を取り入れることで、内部監査の実効性を高めようとする動き が、実務の現場で現実的な選択肢として広がっています。
内部監査アウトソーシングは、単なる人手不足対策や効率化の話ではありません。
それは、「自社で万が一不祥事が起きたとき、第三者委員会の報告書に何と書かれるのか」という問いに、事前にどう備えるかという話です。
IPO準備会社にとっては上場審査対応として。既上場会社にとっては、上場後も内部監査を機能させ続けるために。内部監査に外部の専門家を活用するという動きは、そうした現実的なリスク意識の中から生まれてきた内部監査の「進化」の一つの形だと言えるでしょう。
IPOについてのお悩みがあればご相談ください
ここまで、内部監査を“外部の専門家”に委ねる会社が増えている理由について解説してきました。
本記事の内容がIPO準備を検討・実施している皆さまの参考になれば幸いです。
また、O f All株式会社では、IPOを目指す、目指そうとしてる企業様に向けて無料相談を実施しております。
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