5年前のIPO審査と今のIPO審査ここが違う 知らないと上場できない「最新審査トレンドの正体」

この記事でわかること
- 今のIPO審査で特に重要視されるポイント
- 監査法人も急速に厳格化
- 証券取引所・証券会社が特に強化している領域
- 結論として最新審査の本質はこの3つに集約される
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O f All株式会社
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IPO専門家
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IPO審査には、明確な“時代の空気”があります。
制度としての上場基準は大きく変わっていませんが、審査を行う側の解釈・着眼点・リスク感度は明確に変化しています。 だからこそ、IPOコンサルタントを選ぶうえで最も重要なのは、「現在の審査トレンドを深く理解しているか」これに尽きます。
その背景をひと言でまとめるなら、“形から実態へ、成長からガバナンスへ”審査の重心が完全に移ったということです。
本記事では、5年前と現在で何がどう違うのか、まとめました。
今のIPO審査で特に重要視されるポイント
(1)事業計画の合理性を徹底的に確認される
5年前は、
- 売上・利益が伸びていれば概ね問題なし
- 根拠が曖昧な“野心的な計画”でも許容度が高かった
今は、
- 計画の前提条件KPI(LTV、ARPU、解約率など)を徹底的に検証される
- 最低賃金の上昇や外注費の上昇、確実な採用の可能も織り込む必要がある
- 計画策定プロセスが属人化していないかも審査される
- 「達成可能性」を示す説明責任が必須
- 事業計画は“数字の作文”ではなく“再現性があるロジック”でなければ通らない
(2)予算管理体制の精度向上
5年前は、
- 予算の達成は会社が努力して達成するもの
- 月次で予実をざっくり比較し、理由を説明できれば良かった
- 差異分析の粒度は粗くても許容された
今は、
- 差異の原因を“外部要因/内部要因”に分けて説明が必須
- 経営会議・取締役会での報告内容/未達時の対応策(議事録で確認)まで見られる
予実管理は、いま最も審査が厳しい領域のひとつです。
(3)プロジェクト別/製商品別/顧客別の採算管理まで必要
5年前は、
- 事業セグメント単位の黒字で十分だった
- 顧客別・製品別の収益性までは問われないことが多かった
今は、
- プロジェクト別の損益管理は必須
- 工数管理の仕組みが実際に運用されているかを証跡確認
- 赤字案件の発生原因と再発防止策の説明が求められる
- SaaS企業はLTV/CACの妥当性が重点審査に
(4)広告宣伝費/接待交際費の費用対効果まで確認される
5年前は、
- 支出が妥当であれば、費用対効果の検証は緩かった
- 接待費の確認は行われていたが、金額妥当性の確認のみ
- 広告宣伝費の確認は行われていなかった
今は、
- 広告費は CPA、CVR、LTV に基づく効果測定が必須
- チャネル別の効率性分析が求められる
- 接待費は 目的/効果測定/承認ルール/反社チェック/証跡が見られる
- 経営陣の接待は個別確認対象
特に広告費は、これまでは利益調整として使われていたため、今は重点審査項目です。
監査法人も急速に厳格化
(5)業務プロセスの整合性・運用徹底確認
5年前は、
- フローチャートとマニュアルがあれば形式的にはOK
今は、
- フロー → 記述書 → RCM → 証憑 の完全整合をチェック
- 期末異常取引(返品、調整仕訳)は必ず確認される
- 会計見積り(引当金、減損、売上認識)は重点監査項目
運用証跡が弱いと、N-1にしてもらえない事態が起きます。
(6)IT統制(情報セキュリティ・サイバー対策)強化
5年前は、
- ITは監査の付随領域という扱い
- 退職者IDや権限管理の不備は軽微な指摘に留まることも
今は、
- 退職者IDの削除、権限棚卸、ログ管理が必須
- 開発/本番環境の分離はクリティカルチェック
- クラウドサービス利用時の統制(SOCレポート)も必須
- サイバーリスクが「上場後の重大リスク」と位置付けられている
IT統制は審査落ちしやすい“最新の落とし穴”です。
証券取引所・証券会社が特に強化している領域
(7)経営者のコーポレート・ガバナンス意識
5年前は、
- 経営者の姿勢が問われることはあったが、深掘りは限定的だった
- 管理本部長が上場書類を作成すればIPOできた
今は、
- 経営者のガバナンス姿勢が審査の中心
- 「社長決裁=例外運用」とみなされるため厳しく確認される
- 経営者が不正リスクをどう認識しているかを説明できなければNG
(8)経営者を監視する仕組みが整っているか
5年前は、
- 社外役員を置けば形式上は機能していると扱われた
今は、
- 社外役員の牽制機能が“実態ベース”で審査される
- 議事録で社外役員が質問・指摘しているかが確認される
- 社外取締役が「経営者と対等に議論できる体制」が必須
- 社外取締役が半数以上を占める任意の指名報酬等諮問委員会の設置が強く求められる
- IPO準備段階から、将来的な監査等委員会設置会社への移行など、よりガバナンスを強固にする機関設計・組織体制の構築を意識することも重要
(9)決算・開示体制の早期化・再現性
5年前は、
- 期日までに有価証券報告書等が作成できればOK
今は、
- 開示体制が整わないとN-1に進めない
- 管理部門の人員強化が審査での指摘ポイントに(どんなに小規模なIPOでも管理部門10名以上必須)
- 内部統制報告制度の負担に耐えうる組織か確認される
管理部門体制については以下の資料も参考にしてみてください。

(10)未払い残業代・ハラスメント対応はすでに「定番」
労務リスクは、上場後の不祥事件数が極めて多いため、もはや “審査の基礎科目” といえる領域です。
- 未払い残業代がないか
- タイムカード運用は実態と一致しているか
- ハラスメント相談窓口が機能しているか
- 36協定の遵守
- 社会保険加入漏れの有無
これらは「最低限」の確認項目です。
結論として最新審査の本質はこの3つに集約される
ここまで多くの論点がありますが、本質はたった3つです。
① 経営者の姿勢が確認される(ガバナンス)
企業文化・倫理観・経営者不正への備えが問われる。
② 運用を徹底的に確認する(実態重視)
書類ではなく、証跡・ログ・議事録・現場ヒアリング。
③ コーポレート・ガバナンス体制の強化(管理部門の充実)
内部統制・予実管理・採算管理・IT統制など実務レベルの成熟度。
最新のIPO審査は、昔のように「利益が出ている」「成長している」だけでは通りません。
“IPO後に問題を起こさない会社かどうか”ここが全てです。
そしてそれを証明するのは、「経営陣のガバナンス姿勢 × 実態としての運用 × 再現性ある管理体制」この3点セットです。5年前なら上場できていた企業でも、今の基準では上場できない――。
これが今のIPO審査のリアルです。
IPOについてのお悩みがあればご相談ください
ここまで、5年前のIPO審査と今のIPO審査ここが違う 知らないと上場できない「最新審査トレンドの正体」について解説してきました。
本記事の内容がIPO準備を検討・実施している皆さまの参考になれば幸いです。
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