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TOKYO PRO Market(TPM)上場とは?メリット・デメリットから上場要件まで解説

この記事でわかること

  • TPM(TOKYO PRO Market)とは
  • 一般市場との主な違い
  • TOKYO PRO Marketの上場基準と要件
  • TOKYO PRO Marketに上場するメリット・デメリット
  • TOKYO PRO Marketの上場費用とスケジュール

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O f All株式会社の編集局です。役員報酬・株式報酬制度・ストック・オプション・資本政策・IPOに関するノウハウを発信しています。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)は、東京証券取引所が運営するプロ投資家向けの株式市場です。一般市場と比較して上場基準が緩和されており、形式基準がないことや上場前の監査期間が1年で済むことから、近年では新規に上場する企業数が増加しています。

 

本記事では、TOKYO PRO Marketの基本的な仕組みから上場要件、メリット・デメリット、費用やスケジュール、そして上場が向いている企業の特徴まで、包括的に解説します。一般市場への上場を検討している企業や、短期間での上場を目指す企業の方は、ぜひ参考にしてください。

 

また、TPM上場時のストック・オプション活用の留意点については、以下の記事をご確認ください。
🔗TOKYO PRO Market(TPM)上場と上場時のストック・オプション活用の留意点

 

TPM(TOKYO PRO Market)とは

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット、通称TPM)は、東京証券取引所が運営するプロ投資家向けの株式市場です。2009年6月に「TOKYO AIM取引所」として開設され、2012年7月に現在の名称に変更されました。一般市場(プライム・スタンダード・グロース市場)とは異なり、特定投資家のみが参加できる市場として位置づけられています。

プロ投資家とは、金融商品取引法で定められた十分な知識・経験・資産を持つ投資家を指し、機関投資家や一定の要件を満たす法人・個人が該当します。一般の個人投資家は参加できない点が、他の市場との大きな違いとなっています。

一般市場との主な違い

TOKYO PRO Marketと一般市場の最大の違いは、上場基準の柔軟性にあります。一般市場では株主数や流通株式数、時価総額などの形式基準(数値基準)が厳格に定められていますが、TOKYO PRO Marketにはこうした形式基準がありません。

また、上場前の監査期間も一般市場が2年間必要なのに対し、TOKYO PRO Marketは1年間で済みます。内部統制報告書や四半期報告書の提出も任意とされており、上場準備期間を大幅に短縮できる仕組みとなっています。

さらに、審査主体も異なります。一般市場では証券会社と東証が審査を行いますが、TOKYO PRO Marketでは東証から認証を受けた「J-Adviser」が上場適格性を判断します。申請から上場承認までの期間も、一般市場の2〜3ヶ月に対し、TOKYO PRO Marketは10営業日程度と非常に短いのが特徴です。

また、その他の主な特徴は下表のとおりです。


項目TOKYO PRO Market東証他市場
開示言語英語又は日本語日本語
上場基準形式基準:なし
実質基準:あり
形式基準:あり(株主数、流通株式等)
実質基準:あり
審査主体J-Adviser主幹事証券会社、東証
上場申請から上場承認までの期間10営業日
(上場申請前にJ-Adviserによる意向表明手続きあり)
2、3か月程度
(標準審査期間)
上場前の監査期間最近1年間最近2年間
内部統制報告書任意必須
四半期開示(決算短信)任意必須
主な投資家特定投資家等
(いわゆる「プロ投資家」)
一般投資家

🔗日本取引所グループ「TOKYO PRO Marketの主な特徴」より引用

TOKYO PRO Marketの上場基準と要件

J-Adviserによる審査制度

TOKYO PRO Marketでは、形式基準が存在しない代わりに、東証から認証を受けた「J-Adviser」が上場適格性を審査します。J-Adviserは、上場準備から上場後の適時開示まで、企業をトータルでサポートする重要なパートナーとなります。上場を目指す企業は、必ずJ-Adviserと契約を締結し、その指導のもとで上場準備を進める必要があります。

J-Adviserは上場適格性の調査・確認を実施し、基準を満たしていると判断した場合に限り、東証へ上場意向表明を行います。このように、一般市場とは異なる独自の審査体制が構築されているのが特徴です。

上場適格性の5つの要件

TOKYO PRO Marketへの上場には、以下の5つの要件を満たす必要があります。

第一に、東証に相応しい企業であることが求められます。法律・会計・税制を適切に理解し、予算統制が整備され、上場後12ヶ月間の運転資金が確保されているかが確認されます。

第二に、事業を公正かつ忠実に遂行していることです。関連当事者取引の把握・牽制体制が整い、代表取締役や役員の資質に問題がないことが審査されます。

第三に、コーポレートガバナンスおよび内部管理体制が適切に整備・運用されていることです。企業規模に応じた社内規程の整備、必要人員の配置、法令遵守体制の構築が必要となります。

第四に、企業内容やリスク情報を適切に開示できる体制が整備されていることです。上場後の開示体制の確保、開示規則の理解、インサイダー取引防止体制の整備が求められます。

第五に、その他公益や投資家保護の観点から東証が必要と認める事項です。反社会的勢力との関係がなく、反社排除体制が整備され、設立以降の株主異動状況を適切に把握していることが確認されます。

TOKYO PRO Marketに上場するメリット

上場準備期間とコストの削減

TOKYO PRO Marketの最大のメリットは、上場準備期間の短さとコストの低さです。一般市場への上場にはおおよそ3年以上の準備期間が必要ですが、TOKYO PRO Marketでは監査期間が1年で済むため、約2年程度での上場が可能となります。

上場にかかる費用も大幅に抑えられます。一般市場では上場準備に約2億円、年間維持費に約5,000万円かかるのに対し、TOKYO PRO Marketでは上場準備に2,000万円〜4,000万円、年間維持費は1,500万円〜2,500万円程度で済みます。この費用面での負担軽減は、企業にとって大きな魅力となります。

東証上場企業としての信用力向上

TOKYO PRO Marketに上場することで、「東証上場企業」としての社会的信用を獲得できます。上場基準は一般市場より緩和されていますが、東京証券取引所の市場である点は変わりません。

この信用力向上により、取引先からの信頼獲得や金融機関からの借入交渉が進めやすくなります。特に経営者個人保証が外れる可能性が高まることは、経営者にとって大きなメリットです。また、企業の知名度が上がることで、優秀な人材の採用にも有利に働き、従業員の士気向上にもつながります。

オーナー経営権の維持と一般市場へのステップアップ

TOKYO PRO Marketには流通株式数や流通株式比率の形式基準がないため、上場時に株式を大量に手放す必要がありません。そのため、オーナーの持株比率を維持したまま上場でき、経営の支配権を保ちながら上場企業としてのメリットを享受できます。

さらに、TOKYO PRO Marketは一般市場へのステップアップの足がかりとしても活用できます。上場準備を通じて管理体制が整備され、上場企業としての実績を積むことで、将来的にグロース市場やスタンダード市場への市場変更も可能となります。実際に、TOKYO PRO Market上場後に一般市場へステップアップした企業も複数存在しており、段階的な成長戦略として有効な選択肢となっています。

TOKYO PRO Marketに上場するデメリット

市場流動性の低さ

TOKYO PRO Marketの最大のデメリットは、市場の流動性が低いことです。市場参加者がプロ投資家に限定されているため、一般市場と比較して投資家の絶対数が少なく、株式の売買が活発に行われにくい特徴があります。

プロ投資家は短期的なキャピタルゲインを目的とせず、長期的な視点で投資判断を行うため、日々の売買取引が限定的になります。その結果、株価の変動が小さく、市場での株式売却が困難になる可能性があります。ただし、この流動性の低さは裏を返せば、短期的な株価変動に左右されず安定した経営ができるという側面もあります。

資金調達の難しさ

市場流動性が低いことに関連して、TOKYO PRO Marketでは資金調達が難しくなります。一般市場では、上場時の新規株式公開(IPO)や上場後の公募増資により、比較的スムーズに大規模な資金調達が可能です。

しかし、TOKYO PRO Marketでは投資家層が限定されているため、上場時の株式売出しによる資金調達額が限られます。上場後の公募増資についても、需要が十分に見込めない場合があります。そのため、上場による大規模な資金調達を主目的とする企業には、TOKYO PRO Marketは適さない可能性があります。資金調達よりも信用力向上や知名度向上を目的とする企業に向いている市場といえます。

上場維持コストと開示義務

TOKYO PRO Marketは一般市場より上場維持コストが低いものの、年間で1,500万円〜2,500万円程度の費用が継続的に発生します。監査法人への監査費用、J-Adviserへのモニタリング費用、東証への年間上場料、信託銀行や印刷会社への費用などが必要です。

また、半期と事業年度末の年2回、発行者情報の開示義務があります。企業概況、財務情報、事業リスクなどを適時適切に開示する体制を維持しなければなりません。J-Adviserとの契約も上場維持の必須条件であり、契約解除後に一定期間内に新たなJ-Adviserが見つからない場合、上場廃止となるリスクもあります。

TOKYO PRO Marketの上場費用とスケジュール

上場準備にかかる費用

TOKYO PRO Marketへの上場準備には、2,000万円〜4,000万円程度の費用が必要となります。主な費用項目としては、監査法人へのショートレビュー費用と監査費用、J-Adviserへの上場指導・審査費用と成功報酬、東証への新規上場料(300万円・税抜)、信託銀行への株主名簿管理費用、印刷会社へのディスクロージャー資料作成費用などがあります。

これらの費用は企業の規模や業種によって変動しますが、一般市場への上場費用が約2億円かかることを考えると、TOKYO PRO Marketは10分の1程度のコストで上場できる計算になります。

上場後の維持費用

上場後も継続的に費用が発生します。年間の維持費用は1,500万円〜2,500万円程度で、監査法人への継続監査費用、J-Adviserへのモニタリング費用、東証への年間上場料、信託銀行や印刷会社への継続費用などが含まれます。

一般市場の年間維持費用が約5,000万円であることと比較すると、TOKYO PRO Marketは半分以下のコストで上場を維持できます。この維持費用の低さも、企業がTOKYO PRO Marketを選択する大きな理由となっています。

上場までのスケジュール

TOKYO PRO Marketへの上場は、約2年程度のスケジュールで実現可能です。

直前々期(N-2期)では、監査法人によるショートレビューを受け、現状の課題を把握します。その後、監査契約を締結し、J-Adviserとの契約も進めます。J-Adviser契約は通常、直前々期の期末から直前期の第1四半期に締結されます。

直前期(N-1期)では、監査法人による1年間の監査を受けながら、J-Adviserの指導のもとで社内管理体制や開示体制の整備を進めます。コーポレートガバナンス体制の構築、業務フローの見直し、内部監査体制の確立などを行います。

申請期(N期)では、J-Adviserによる上場適格性の最終調査・確認が行われます。調査完了後、J-Adviserが東証に上場意向表明書を提出し、東証との面談を経て有価証券新規上場申請書を提出します。申請から約10営業日で上場承認され、その後上場日を迎えます。

既に監査を受けている企業や管理体制が整っている企業であれば、さらに短期間での上場も可能です。

TOKYO PRO Market上場が向いている企業

一般市場へのステップアップを目指す企業

TOKYO PRO Marketは、将来的にグロース市場やスタンダード市場への上場を目指している企業に適しています。一般市場の形式基準を現時点では満たせないものの、上場企業としての実績を積みながら企業成長を加速させたい場合、TOKYO PRO Marketを足がかりとする戦略が有効です。

実際に、TOKYO PRO Market上場後に一般市場へステップアップした企業は複数存在します。上場準備を通じて管理体制が整備され、上場企業としての開示実績を積むことで、一般市場への移行がスムーズになります。東京証券取引所の上場推進部も、一般市場への市場変更を検討している企業に対して支援活動を行っており、段階的な成長戦略として活用できます。

知名度向上と人材確保を重視する企業

資金調達よりも企業の知名度向上や信用力強化を目的とする企業に、TOKYO PRO Marketは適しています。特に地方企業や歴史ある企業にとって、「東証上場企業」という肩書きは取引先からの信頼獲得や金融機関との関係強化に大きく寄与します。

優秀な人材の確保が課題となっている企業にもメリットがあります。上場企業というステータスは、採用活動において大きなアピールポイントとなり、従業員の士気向上にもつながります。実際、TOKYO PRO Market上場企業は地方企業が人材確保の優位性を得るための手段としても活用されています。

経営権を維持したい企業

オーナー経営者が経営の支配権を維持したまま上場したい場合、TOKYO PRO Marketは理想的な選択肢です。一般市場では流通株式数や流通株式比率の基準を満たすため、一定数の株式を手放す必要がありますが、TOKYO PRO Marketにはこうした形式基準がありません。

そのため、創業者や経営陣の持株比率を高く保ったまま上場でき、長期的な視点で経営戦略を実行できます。特に事業承継を控えた企業や、経営の独立性を確保しつつ、上場によって企業価値を高めたい企業に適しています。

短期間での上場を実現したい企業

上場準備期間を短縮したい企業にとって、TOKYO PRO Marketは有力な選択肢となります。一般市場が3年以上の準備期間を要するのに対し、TOKYO PRO Marketは約2年程度で上場可能です。

明確な短期目標を設定することで、社員の一体感を醸成し、組織全体のモチベーション向上につながります。また、上場準備コストも抑えられるため、資金面での負担を軽減しながら上場企業としてのメリットを享受できます。

まとめ

TOKYO PRO Marketは、形式基準がなく監査期間も1年で済むため、一般市場と比較して上場しやすい市場です。上場準備費用は2,000万円〜4,000万円程度、年間維持費は1,500万円〜2,500万円程度と、一般市場の約半分以下のコストで「東証上場企業」としての信用力を獲得できます。

一方で、市場流動性が低く大規模な資金調達が難しいというデメリットもあります。そのため、資金調達よりも知名度向上や信用力強化を目的とする企業、将来的に一般市場へのステップアップを目指す企業、経営権を維持したまま上場したい企業に適しています。

自社の成長戦略や上場目的を明確にしたうえで、TOKYO PRO Marketが最適な選択肢かどうかを検討することが重要です。

IPOについてのお悩みがあればご相談ください

ここまで、TOKYO PRO Market(TPM)について解説してきました。
本記事の内容がIPO準備を検討・実施している皆さまの参考になれば幸いです。

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