エンジニア採用で苦戦するスタートアップが知るべき実践的手法を解説

この記事でわかること
  • スタートアップのエンジニア採用が直面する5つの現実
  • エンジニアがスタートアップを選ぶ本当の理由
  • 採用を始める前に整えるべき3つの基盤
  • スタートアップに最適な6つの採用手法
  • フェーズ別エンジニア採用戦略の立て方

エンジニアの採用は、スタートアップにとって事業成長の生命線です。しかし、求人倍率12倍を超える過酷な採用市場で、知名度も資金力も限られるスタートアップが優秀なエンジニアを獲得することは至難の業となっています。

本記事では、なぜエンジニアがあえてスタートアップを選ぶのか、その本質的な理由を理解した上で、大手企業とは異なる採用アプローチを解説します。ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、コストを抑えながら効果を最大化する実践的な手法から、採用後の定着率を高める組織づくりまで、スタートアップが今すぐ実行できる戦略を体系的にまとめました。

採用に苦戦している経営者や人事担当者の方は、自社の採用活動を見直すヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

目次

スタートアップのエンジニア採用が直面する5つの現実

エンジニア採用市場は年々厳しさを増しており、2024年のエンジニア求人倍率は12倍を超える状況です。特にスタートアップにとって、この環境下での採用活動は想像以上に困難を極めています。まずは現実を正しく認識することから始めましょう。

圧倒的な売り手市場という構造的課題

エンジニアの有効求人倍率は他職種の4倍以上という異常な水準にあり、2030年には79万人の人材不足が予測されています。この構造的な需給ギャップは、政府が「世界最先端デジタル国家創造宣言」を打ち出すほど深刻な社会課題となっています。スタートアップは限られた人材を大手企業や成長企業と奪い合う構図に置かれており、従来の採用手法では太刀打ちできない現実があります。

知名度の壁と認知獲得の難しさ

国内に約2,000社存在するスタートアップの中で、自社の存在を知ってもらうことは至難の業です。優れたプロダクトを開発していても、それが自動的に採用力につながるわけではありません。求人サイトに掲載しても大手企業の求人に埋もれてしまい、そもそも求職者の目に留まらないケースがほとんどです。

採用コストと期待値のジレンマ

資金調達環境の改善により、シード期のスタートアップでも競争力のある給与提示が可能になってきました。しかし、大手企業やコンサルティングファームとの提示額競争に巻き込まれると、前年収の1.5倍という水準での殴り合いになることも珍しくありません。限られた資金で持続可能な採用を実現する難しさに直面しています。

技術的魅力と事業の安定性のバランス

エンジニアは技術的な挑戦や成長機会を重視する一方で、事業の安定性も無視できません。スタートアップは最新技術の導入や裁量の大きさをアピールできますが、事業継続性への不安から候補者に躊躇されることも多く、このバランスをどう取るかが採用成功の分かれ目となります。

採用プロセスの未整備がもたらす機会損失

急成長期にあるスタートアップでは、採用プロセスが体系化されていないケースが多く見られます。面接基準の不統一、選考スピードの遅さ、候補者体験の軽視などが原因で、せっかく興味を持ってくれた優秀な人材を逃してしまうことがあります。

エンジニアがスタートアップを選ぶ本当の理由

厳しい採用環境の中でも、あえてスタートアップを選ぶエンジニアは確実に存在します。彼らが大手企業の安定性を捨ててまでスタートアップに飛び込む理由を理解することで、効果的な採用戦略を構築できます。

技術選定の自由度がもたらす成長機会

スタートアップ最大の魅力は、技術選定を自分で決められる自由度の高さです。大手企業では既存システムや過去の技術的決定に縛られることが多い中、スタートアップでは最新のフレームワークや言語を積極的に採用できます。エンジニアにとって、自分の判断で最適な技術スタックを選び、それを実装できる環境は、単なる仕事を超えた学習と成長の場となります。特にSIer出身者や大手企業で制約を感じていたエンジニアにとって、この自由度は転職を決意する大きな要因となっています。

ゼロから作り上げる醍醐味

技術的負債のない環境で、設計から実装まで一貫して携われることは、エンジニアにとって大きな魅力です。前任者のコードや複雑化したシステムと格闘する必要がなく、理想的なアーキテクチャを追求できる環境は、技術者としての純粋な喜びをもたらします。サービスの根幹から関わり、自分の設計思想を反映させられることは、キャリアにおいても貴重な経験となります。

事業インパクトの実感と裁量の大きさ

少人数組織だからこそ、個人の貢献が事業に与えるインパクトを直接実感できます。大企業では見えにくい自分の仕事の価値が、スタートアップでは数値や顧客の反応として明確に現れます。また、エンジニアリングの領域を超えて、プロダクト戦略や事業開発にも関与できる機会があり、ビジネス視点を持ったエンジニアとして成長できる環境があります。

柔軟な働き方と成果主義の評価

リモートワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方を早期から導入しているスタートアップが多く、ワークライフバランスを重視するエンジニアにとって魅力的です。さらに、年功序列ではなく成果に基づく評価制度により、若くても実力次第で重要なポジションに就けるチャンスがあります。

ストック・オプションという可能性

給与水準では大手に劣る場合でも、ストック・オプションによる将来的なリターンの可能性は、リスクを取れるエンジニアにとって大きな魅力となります。自分が手がけたプロダクトの成長が、直接的な経済的リターンにつながる可能性は、モチベーションの源泉となっています。

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採用を始める前に整えるべき3つの基盤

優秀なエンジニアを採用するには、求人を出す前の準備が成否を分けます。多くのスタートアップが陥る「とりあえず募集を開始する」という失敗を避けるため、採用活動の土台となる3つの基盤を確実に整えましょう。

採用目的と人材要件の明確化

採用活動で最も重要なのは「なぜ今エンジニアが必要なのか」を言語化することです。単に人手不足を解消したいという曖昧な理由では、採用後のミスマッチを招きます。現在の開発課題、今後の事業展開、チーム構成を踏まえて、必要なスキルセットと経験を具体的に定義しましょう。

求める人材像は「必須要件」と「歓迎要件」に分けて整理します。技術スキルだけでなく、チームワークへの姿勢、成長意欲、自社のミッションへの共感度も含めて検討することが重要です。特にスタートアップでは、スキルの高さよりもカルチャーフィットを重視すべきケースも多く、創業メンバーと議論を重ねて共通認識を作ることが欠かせません。

自社の魅力と課題の棚卸し

エンジニアに選ばれる企業になるには、自社の強みと弱みを正確に把握する必要があります。技術環境、開発体制、使用言語、インフラ構成などの技術的な情報はもちろん、働き方の柔軟性、評価制度、キャリアパスなども整理しましょう。

重要なのは、弱みを隠すのではなく、それを上回る魅力をどう伝えるかです。例えば「技術的負債はあるが、リファクタリングの裁量が大きい」「給与は平均的だが、ストック・オプションと成長機会がある」など、正直かつ前向きな情報開示が信頼につながります。現場のエンジニアと一緒に、自社で働く魅力を言語化する作業を行うことで、説得力のあるメッセージを作れます。

採用プロセスと評価基準の設計

応募から内定までの選考フローを明確に設計し、各段階での評価基準を統一することが重要です。書類選考、技術課題、面接の回数と担当者を決め、候補者の負担を最小限に抑えながら、必要な情報を収集できる設計を心がけましょう。

特に重要なのは、現場エンジニアの巻き込み方です。技術面接では現場の視点が不可欠ですが、業務への影響を最小限にする工夫も必要です。面接官トレーニングを実施し、何を聞くべきか、どう評価するかの基準を共有することで、属人的な判断を防げます。また、選考スピードも重要な要素であり、優秀な人材を逃さないために、各プロセスを迅速に進められる体制を整えておくことが求められます。

スタートアップに最適な6つの採用手法

限られたリソースで優秀なエンジニアを採用するには、大手企業とは異なるアプローチが必要です。スタートアップの特性を活かしながら、コストパフォーマンスの高い採用手法を組み合わせることで、効果的な人材獲得が可能になります。

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ダイレクトリクルーティングで潜在層にアプローチ

知名度の低さを克服する最も効果的な手法がダイレクトリクルーティングです。GitHubやQiitaで活動するエンジニア、LinkedInのプロフィールから自社にマッチする人材を見つけ、個別にスカウトメールを送ります。重要なのは、なぜその人に声をかけたのか、自社で何を実現してほしいのかを具体的に伝えることです。テンプレート的なメッセージではなく、相手のスキルや経験を踏まえたパーソナライズされたアプローチが、返信率を大きく左右します。

リファラル採用による質の高い人材確保

社員の紹介によるリファラル採用は、採用コストを抑えながら質の高い人材を確保できる手法です。現場のエンジニアが推薦する人材は、技術力だけでなくカルチャーフィットも期待できます。成功のポイントは、紹介のハードルを下げることです。「まずはカジュアルに話を聞いてみる」という軽いスタンスから始め、紹介者へのインセンティブ設計も含めて、社内に紹介文化を醸成することが重要です。

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SNSとコンテンツマーケティングの活用

TwitterやnoteなどのSNSを活用した情報発信は、コストをかけずに認知を広げる有効な手段です。テックブログで技術的な知見を共有し、開発の裏側や課題解決のプロセスを公開することで、エンジニアコミュニティでの存在感を高められます。重要なのは、採用目的を前面に出さず、純粋に価値のある情報を提供することです。継続的な発信により、転職潜在層との接点を作り、タレントプールを構築できます。

副業・業務委託からの正社員登用

いきなり正社員採用にこだわらず、副業や業務委託から始める柔軟なアプローチも効果的です。プロジェクトベースでの参画により、お互いのフィット感を確認してから正社員へ移行することで、ミスマッチのリスクを軽減できます。優秀なエンジニアほど複数の選択肢を持っているため、最初のハードルを下げることが重要です。

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エンジニア特化型採用媒体の戦略的活用

エンジニアに特化した採用媒体を活用することで、効率的にターゲット層にリーチできます。重要なのは、求人票の質にこだわることです。使用技術、開発環境、チーム構成を詳細に記載し、どんな課題に取り組めるのかを具体的に示すことで、応募の質が向上します。

採用代行サービスによる専門性の補完

採用ノウハウが不足している場合は、エンジニア採用に特化した採用代行サービスの活用も選択肢です。初期コストはかかりますが、採用プロセスの設計から実行まで専門家のサポートを受けることで、採用成功率を高められます。

フェーズ別エンジニア採用戦略の立て方

スタートアップの成長フェーズによって、必要なエンジニア像や採用アプローチは大きく変わります。自社の現在地を正確に把握し、フェーズに応じた採用戦略を実行することが、持続的な組織成長の鍵となります。

シード期:技術的リーダーの獲得に集中

創業直後のシード期は、プロダクトの基盤を作る最も重要な時期です。この段階では、技術選定から設計、実装まで一貫して担えるフルスタックエンジニアや、将来的にCTOとなれる技術リーダーの採用に注力すべきです。給与競争力は限られますが、ストック・オプションの魅力と、ゼロから作り上げる醍醐味を前面に打ち出しましょう。

採用手法としては、創業メンバーのネットワークを最大限活用したリファラル採用が中心となります。また、技術顧問やアドバイザーとして優秀なエンジニアを巻き込み、段階的に関与を深めてもらうアプローチも有効です。重要なのは、ビジョンへの共感と、不確実性を楽しめるマインドセットを持つ人材を見極めることです。

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シリーズA:開発体制の基盤構築

プロダクトマーケットフィットが見え始めたシリーズAでは、開発スピードを加速させるためのチーム拡大が必要になります。この段階では、特定領域に強みを持つスペシャリストの採用を進めながら、開発プロセスやドキュメント整備を担えるエンジニアも必要です。

ダイレクトリクルーティングを本格化させ、採用媒体への投資も開始する時期です。技術ブログやエンジニア向けイベントでの情報発信を強化し、会社の認知度向上に努めましょう。面接プロセスも体系化し、技術課題やペアプログラミングなど、実践的なスキル評価の仕組みを導入することが重要です。

シリーズB以降:組織のスケールと専門性の深化

事業が軌道に乗り始めたシリーズB以降は、エンジニア組織のスケールと専門性の深化が課題となります。インフラエンジニア、セキュリティエンジニア、機械学習エンジニアなど、専門領域ごとのチーム編成が必要になり、エンジニアリングマネージャーの採用も重要課題となります。

この段階では、採用専任者の配置や採用代行サービスの活用により、採用活動を本格的に組織化すべきです。新卒採用やインターンシップの導入により、中長期的な人材パイプラインの構築も開始しましょう。また、技術的負債の解消や開発生産性の向上といった、1-10フェーズ特有の課題に取り組める経験豊富なエンジニアの採用も重要です。

フェーズ移行期の注意点

各フェーズの移行期には、組織文化の変化による離職リスクが高まります。特に0-1を楽しんでいたエンジニアが、1-10フェーズの組織化に馴染めないケースは多く見られます。事前に次のフェーズで必要となる役割や働き方の変化を共有し、既存メンバーの意向を確認しながら、新しい人材とのバランスを取ることが求められます。

エンジニア採用で陥りやすい落とし穴と対策

スタートアップのエンジニア採用では、限られたリソースと経験不足から、多くの企業が同じような失敗を繰り返しています。これらの落とし穴を事前に認識し、適切な対策を講じることで、採用の成功確率を大きく高められます。

技術選定の自由度を過度に強調する危険性

「技術選定が自由」というアピールは諸刃の剣です。確かにエンジニアにとって魅力的ですが、過度に尖った技術選定や実験的すぎるアーキテクチャは、プロダクトのリリースを遅らせ、将来的な技術的負債となるリスクがあります。実際、最新技術の導入に固執するあまり、安定性を欠いたシステムになり、結果的にサービスが立ち行かなくなるケースも少なくありません。

対策として、技術選定の自由度は担保しつつも、事業フェーズに応じた現実的な判断基準を設けることが重要です。0-1フェーズでは枯れた技術で素早くリリースし、その後段階的に技術的な挑戦を取り入れるロードマップを示すことで、エンジニアの期待値をコントロールできます。

スキル要件の設定ミスによる採用難航

理想を追求しすぎて非現実的な要件を設定したり、逆に曖昧な要件で幅広く募集したりすることは、採用活動の長期化につながります。「フルスタックエンジニア募集」という漠然とした求人では、応募者も自分がフィットするか判断できません。また、大手企業と同等以上のスキル要件を設定しても、条件面で競争力がなければ採用は困難です。

必須要件は本当に必要な最小限に絞り、それ以外は歓迎要件として柔軟に対応する姿勢が重要です。また、現時点でのスキルだけでなく、学習意欲や成長可能性も評価基準に含めることで、採用の間口を広げられます。

選考スピードの遅さによる機会損失

優秀なエンジニアは複数社から内定を獲得することが一般的であり、選考スピードの遅さは致命的です。社内調整に時間がかかったり、意思決定プロセスが不明確だったりすると、他社に優秀な人材を奪われてしまいます。特に、技術面接の日程調整に手間取るケースが多く見られます。

対策として、応募から内定まで2週間以内で完結させる選考フローを設計しましょう。面接は可能な限りオンラインで実施し、技術課題は事前に提出してもらうなど、効率的なプロセスを構築することが重要です。

採用後のギャップによる早期離職

採用時に伝えていた業務内容や開発環境と、実際の現場にギャップがあると、早期離職につながります。特に「新規開発ができる」と聞いて入社したのに、実際は既存システムの保守ばかりというケースは、エンジニアのモチベーションを大きく下げます。

面接段階で、良い面だけでなく課題や制約も正直に伝えることが重要です。また、入社前にチームメンバーとのカジュアル面談を設定し、実際の業務や雰囲気を体感してもらうことで、期待値のズレを防げます。透明性の高いコミュニケーションが、長期的な定着につながります。

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採用後の定着率を高める組織づくり

せっかく採用したエンジニアが短期間で離職してしまっては、採用コストも時間も無駄になります。スタートアップにとって、採用以上に重要なのが定着率の向上です。エンジニアが長期的に活躍できる組織づくりのポイントを押さえましょう。

オンボーディングプロセスの体系化

入社直後の体験が、その後の定着率を大きく左右します。多くのスタートアップでは「とりあえず動いて覚えて」という雑なオンボーディングになりがちですが、これではエンジニアの不安と不満を増大させます。入社初日から1ヶ月間のオンボーディングプログラムを明確に設計し、技術環境のセットアップ、プロダクトの理解、チームメンバーとの関係構築を計画的に進めることが重要です。

具体的には、開発環境の構築手順書の整備、既存システムのアーキテクチャ説明、コードレビューの基準共有などを体系化しましょう。また、メンター制度を導入し、技術的な質問だけでなく、組織文化や暗黙知についても気軽に相談できる環境を作ることで、新入社員の心理的安全性を確保できます。

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成長機会の明確な提示

エンジニアが最も重視するのは、技術的な成長機会です。スタートアップの業務は幅広く、時には雑務も多いですが、その中でもスキルアップにつながる要素を明確に示すことが重要です。新技術の導入機会、カンファレンス参加支援、書籍購入補助など、学習を支援する制度を整備しましょう。

また、エンジニアのキャリアパスを複線化することも効果的です。マネジメント志向だけでなく、技術を極めるスペシャリスト路線も用意し、それぞれに応じた評価と報酬体系を設計することで、多様なキャリア志向に対応できます。定期的な1on1を通じて、個人の成長目標と会社の期待をすり合わせ、具体的な成長計画を共有することが定着につながります。

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心理的安全性の高いチーム文化

エンジニアが実力を発揮するには、失敗を恐れずに挑戦できる環境が不可欠です。コードレビューでの建設的なフィードバック文化、障害発生時の原因追求より再発防止を重視する姿勢、新しいアイデアを歓迎する雰囲気づくりが重要です。特に、ビジネスサイドとエンジニアサイドの相互理解を促進し、技術的な制約や可能性について率直に議論できる関係性を構築しましょう。

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柔軟な働き方と適切な労務管理

リモートワークやフレックスタイムなど、エンジニアの生産性を最大化する働き方を積極的に導入しましょう。ただし、スタートアップだからといって長時間労働を当然視してはいけません。適切な工数見積もりと余裕を持ったスケジュール設定により、持続可能な開発ペースを維持することが、長期的な定着につながります。また、定期的なチームビルディングやオフラインでの交流機会を設けることで、リモート環境でも帰属意識を醸成できます。

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まとめ

スタートアップのエンジニア採用は、構造的な人材不足と知名度の壁という二重の困難に直面しています。しかし、技術選定の自由度やゼロから作る醍醐味、事業インパクトの実感など、スタートアップならではの魅力を的確に伝えることで、優秀なエンジニアを惹きつけることは可能です。

成功のポイントは、自社のフェーズに応じた採用戦略を立て、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など複数の手法を組み合わせることです。また、採用がゴールではなく、オンボーディングの体系化や成長機会の提供により、定着率を高める組織づくりも同様に重要です。

限られたリソースだからこそ、準備と戦略が採用の成否を分けます。本記事で紹介した実践的なアプローチを参考に、自社に最適な採用体制を構築し、事業成長を支えるエンジニアチームを作り上げてください。

本記事が参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

O f All株式会社の編集局です。ファイナンス・資本政策・IPO・経営戦略・成長戦略・ガバナンス・M&Aに関するノウハウを発信しています。

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