構造化面接とは?スタートアップの採用精度を高める面接手法を解説

この記事でわかること
  • 構造化面接とは?
  • 構造化面接・非構造化面接・半構造化面接の違い
  • スタートアップで構造化面接が注目される理由
  • 構造化面接を導入する5つのメリット
  • 構造化面接導入時の4つのデメリット

採用面接の質を高めたいと考えているスタートアップ経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。限られたリソースの中で確実に戦力となる人材を採用するには、面接官による評価のばらつきを抑え、客観的に応募者を見極める仕組みが必要です。

そこで注目されているのが「構造化面接」という手法です。事前に設定した質問項目と評価基準に沿って面接を進めることで、誰が面接官でも公平な評価が可能になります。

本記事では、構造化面接の基本から具体的な実施方法、質問例まで詳しく解説します。採用精度を高め、ミスマッチを防ぎたい方はぜひご一読ください。

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目次

構造化面接とは?

構造化面接とは、事前に設定した評価基準と質問項目に基づいて手順通りに進める面接手法です。すべての応募者に同じ質問を同じ順序で投げかけ、統一された基準で評価することで、面接官による評価のばらつきを最小限に抑えられます。

この手法は臨床心理学の分野で古くから活用されてきましたが、Google社が採用プロセスに導入したことで注目を集め、現在では多くの企業が取り入れています。

構造化面接の特徴

構造化面接の最大の特徴は、面接プロセスの標準化にあります。募集するポジションや職種に応じて最適な質問と評価基準を事前に設計し、それに従って面接を進めます。

質問に対する回答は、あらかじめ定めた評価基準に基づいてスコアリングするのが一般的です。この仕組みにより、面接官の主観や経験の差による評価の偏りを排除し、客観的かつ公平に応募者の能力を測定できます。

構造化面接の目的

構造化面接の主な目的は、自社が求める人材像に合致した人材を公平に評価し、採用ミスマッチを防ぐことです。

面接官の主観に依存する従来の面接スタイルでは、評価にばらつきが生じやすく、優秀な人材を見逃したり、適性のない人材を採用したりするリスクがあります。構造化面接では明確な基準に沿って評価するため、こうした課題を解決できます。

特にスタートアップでは限られたリソースの中で確実に戦力となる人材を採用する必要があるため、構造化面接の導入価値は高いといえるでしょう。

構造化面接・非構造化面接・半構造化面接の違い

面接手法は大きく分けて「構造化面接」「非構造化面接」「半構造化面接」の3つに分類されます。それぞれの特徴を理解することで、自社に最適な面接手法を選択できます。

非構造化面接とは

非構造化面接は、質問項目や評価基準を事前に定めず、面接官が自由に質問を行う面接手法です。自由面接とも呼ばれます。

会話の流れや応募者の反応に応じて柔軟に質問できるため、履歴書からは読み取れない応募者の人間性や価値観を引き出しやすい点がメリットです。一方で、評価基準に一貫性がなく、面接官の主観が入りやすいという課題があります。また、臨機応変な対応が求められるため、ある程度の面接経験が必要となります。

半構造化面接とは

半構造化面接は、構造化面接と非構造化面接の中間に位置する面接手法です。事前に決めた質問を実施した後、面接官が自由に追加質問を行います。

基本的な評価項目は統一されているため、一定の公平性を保ちつつ、応募者の個性や潜在能力を深掘りできる点が特徴です。ただし、追加質問の内容や深掘りの度合いは面接官の判断に委ねられるため、評価にばらつきが生じる可能性があります。

3つの面接手法の比較

構造化面接は公平性と再現性に優れ、誰が面接官でも安定した評価が可能です。非構造化面接は柔軟性が高く応募者の本音を引き出しやすいものの、評価が面接官に左右されます。半構造化面接は両者のメリットを取り入れていますが、それぞれのデメリットも併せ持つ点に注意が必要です。

スタートアップでは面接官の経験値にばらつきがあることも多いため、評価の安定性を重視するなら構造化面接の導入が効果的です。

スタートアップで構造化面接が注目される理由

スタートアップにおいて構造化面接が注目を集めているのは、限られたリソースの中で確実に成果を上げる人材を採用する必要性が高まっているためです。ここでは、スタートアップ特有の課題と構造化面接の親和性について解説します。

採用ミスマッチによる損失の大きさ

スタートアップでは、一人ひとりの採用が事業成長に直結するため、採用ミスマッチの影響が大企業以上に深刻です。採用した人材が期待通りのパフォーマンスを発揮できず早期離職した場合、採用コストや教育コストが無駄になるだけでなく、事業の推進スピードが大きく低下します。

構造化面接では、自社が求める人材像を明確に定義した上で評価基準を設定するため、応募者の適性を客観的に見極められます。これにより採用ミスマッチのリスクを低減し、限られたリソースを有効活用できます。

面接官の経験値のばらつき

スタートアップでは経営陣や現場メンバーが面接を担当することが多く、面接官としての経験やスキルにばらつきが生じやすい傾向があります。従来の非構造化面接では、面接官の力量によって評価の質が大きく変わってしまいます。

構造化面接であれば、事前に質問項目と評価基準が定められているため、面接経験が少ないメンバーでも一定水準の面接を実施できます。これにより、組織全体で安定した採用活動を展開できるようになります。

採用活動の効率化

急成長を目指すスタートアップでは、短期間で複数名の採用が必要になるケースも少なくありません。構造化面接では、同じ質問と評価基準で複数の応募者を評価できるため、採用プロセス全体の効率化が図れます。

また、面接結果を数値化しやすいため、合否判定にかかる時間を短縮でき、スピード感のある採用活動が可能になります。

構造化面接を導入する5つのメリット

構造化面接を導入することで、採用活動の質と効率が大きく向上します。ここでは、スタートアップが構造化面接を取り入れることで得られる具体的なメリットを解説します。

評価基準の統一による公平性の確保

構造化面接では、あらかじめ設定した評価基準に基づいて応募者を評価するため、面接官による評価のばらつきを防げます。面接官の主観や経験、その日のコンディションといった不確定要素を排除し、すべての応募者を同じ視点で公平に比較できます。

特にダイバーシティ推進を重視するスタートアップにとって、無意識のバイアスを排除できる点は大きな利点です。

採用ミスマッチの低減

求める人材像や必要なスキルを採用基準として明確に設定し、それに沿った質問を行うため、自社にフィットする人材を見極めやすくなります。「期待したパフォーマンスを出せなかった」「早期離職してしまった」といった採用後のミスマッチを防ぐ効果が期待できます。

結果的に、再度人材を募集するコストや時間を削減でき、限られたリソースを有効活用できます。

採用業務の効率化

全応募者に対して同一の質問で面接を進められるため、採用フロー全体がシンプルになります。また、面接結果を数値化しやすい点も大きなメリットです。応募者のスコアと実際の職場適応度を照らし合わせることで、質問内容や評価項目の継続的な改善が可能になります。

オンライン面接での評価精度向上

リモートワークが普及する中、オンライン面接を実施するスタートアップも増えています。構造化面接であれば、対面と同様に設定した手順で質問を実施できるため、遠隔環境でも評価の一貫性を保てます。

面接時間の短縮

事前に厳選した質問項目に沿って進めるため、本来の話題から脱線する心配がありません。限られた時間の中で必要な情報を効率的に収集でき、充実度の高い面接を実現できます。

構造化面接導入時の4つのデメリット

構造化面接にはさまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。導入を検討する際は、これらの課題を理解した上で対策を講じることが重要です。

機械的な印象を与えるリスク

質問項目や手順が完全にマニュアル化されているため、面接が機械的・事務的になりやすい点がデメリットです。応募者によっては「尋問されているようだ」「冷たい印象を受けた」と感じる可能性があります。

このような印象を与えてしまうと、応募者の志望意欲が低下したり、企業に対するネガティブなイメージを持たれたりする恐れがあります。対策として、面接官が柔らかい口調を心がける、リラックスできる雰囲気作りを意識するといった工夫が必要です。

質問設計の負荷

構造化面接の実施には入念な事前準備が必要です。採用基準の明確化、評価項目の設定、質問内容の作成など、多くの工程を踏まなければならず、導入時には相当の時間と労力がかかります。

特にスタートアップでは、人事担当者のリソースが限られているケースも多く、配属予定部署のメンバーや経営陣と連携しながら質問を設計する必要があります。また、質問内容が外部に漏洩するリスクを考慮し、定期的にアップデートする手間も発生します。

応募者の潜在能力の見極めが困難

事前に設定された質問の範囲内でしか情報を得られないため、応募者が持つ潜在的な能力や特性、新たな一面を引き出すのは難しい傾向があります。決められた質問だけでは、応募者の創造性や柔軟な発想力といった定量化しにくい資質を完全に把握しきれません。

この課題に対応するには、構造化面接と他の面接手法を組み合わせる、適性検査やグループワークを併用するといった工夫が有効です。

回答の偏りが生じやすい

全応募者に同じ質問を投げかけるため、回答がありきたりで似通ったものになる可能性があります。また、応募者が事前に質問内容を予測し、回答を準備してくる場合もあります。本音を隠して表面的な回答をする応募者も一定数存在するため、本質的な見極めが難しくなることがあります。

構造化面接の実施フロー

構造化面接を効果的に導入するには、段階的なプロセスを踏むことが重要です。ここでは、実際に構造化面接を実施するまでの具体的な流れを解説します。

採用基準の明確化

まず、自社が必要とする人材像を具体的に定義します。募集するポジションや職種に応じて、求めるスキル、経験、行動特性などを明確にしましょう。

例えば「リーダーシップがある人材」「専門知識を持つ人材」「協調性に優れた人材」など、できるだけ具体的に設定します。この際、自社で活躍している社員の行動特性を分析し、コンピテンシーモデルを参考にすると効果的です。複数職種で募集する場合は、それぞれの採用基準を個別に設定する必要があります。

評価項目と評価基準の設定

採用基準に基づいて、面接で評価する項目と具体的な評価基準を決定します。評価項目としては、コミュニケーション力、問題解決力、主体性、計画性などが挙げられます。

評価基準は、各項目について「非常に良い」「良い」「普通」「要改善」といった段階で設定します。段階数は3〜5段階程度が面接官にとって評価しやすく、最適です。それぞれの段階で具体的にどのような回答や行動を期待するのか、明文化しておくことが重要です。

質問項目の作成

評価項目ごとに、評価の起点となる質問を設計します。質問は応募者の過去の行動や仮想的な状況に対する対応を問う内容が効果的です。

作成した質問は、実際に面接官同士でテスト面接を実施し、質問の妥当性や所要時間を確認しましょう。この段階で改善点を洗い出し、質問内容をブラッシュアップします。

面接官のトレーニング

面接を実施する前に、面接官に対して構造化面接の目的や進め方、評価基準について共有します。評価のばらつきを防ぐため、全員が同じ認識で面接に臨めるよう、トレーニングを実施することが重要です。

面接の実施と評価

準備が整ったら、実際に応募者との面接を実施します。事前に定めた質問項目と評価基準に従って面接を進め、終了後は速やかに評価を行いましょう。評価結果は記録として残し、今後の採用活動の改善に活用します。

構造化面接で使える具体的な質問例

構造化面接では、応募者の能力や適性を客観的に評価するために、「行動面接」と「状況面接」の2つのアプローチが用いられます。ここでは、それぞれの質問例と評価のポイントを解説します。

行動面接の質問例

行動面接は、応募者の過去の経験や行動にフォーカスした質問を通じて、能力やパーソナリティを見極める手法です。「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(成果)」の4つの観点から掘り下げるSTAR手法がよく用いられます。

具体的な質問例は以下の通りです。

  • これまでにチームで困難な課題を乗り越えた経験を教えてください
  • その際、あなたはどのような役割を担っていましたか
  • どのような目標を立て、達成するためにどんな行動をしましたか
  • その行動の結果、どのような成果を得られましたか
  • 周囲のメンバーはあなたの行動をどう受け止めていましたか

評価する際は、状況に応じて自身の適性をどれだけ発揮できたか、周囲のサポートがどの程度必要だったかといった観点で判断します。評価基準は3〜5段階に設定し、面接官が評価しやすい仕組みを作りましょう。

状況面接の質問例

状況面接は、仮想的なシチュエーションを提示し、応募者がどのように対応するかを問う手法です。未経験の状況への対応方法から、応募者の思考力や問題解決能力を推し量ることができます。

具体的な質問例は以下の通りです。

  • 納期が差し迫った状況で、チームメンバーが急遽休むことになった場合、どう対処しますか
  • 顧客から理不尽なクレームを受けたとき、どのように対応しますか
  • これまで経験したことのない業務を依頼された場合、どのように取り組みますか
  • 複数のプロジェクトを同時に進める必要がある場合、優先順位をどう判断しますか

評価のポイントは、未知の課題に対してどのような思考プロセスで対応しようとするか、自身の能力をどう活かそうとしているかという点です。論理的な思考力や柔軟性、ストレス耐性なども併せて評価できます。

構造化面接を成功させるための注意点

構造化面接を効果的に運用するには、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、導入後に陥りがちな課題とその対策について解説します。

定期的な質問内容の見直し

同じ質問を長期間使い続けると、応募者間で情報共有が行われ、事前に回答を準備してくる可能性が高まります。特に大規模な採用活動を行う場合、SNSやQ&Aサイトを通じて質問内容が外部に漏洩するリスクがあります。

このような事態を防ぐため、質問内容は定期的にアップデートする必要があります。また、応募者に対して面接内容の守秘義務について事前に注意喚起することも効果的です。質問の本質は変えずに表現を変えるだけでも、一定の効果が期待できます。

雰囲気作りへの配慮

構造化面接は手順通りに進めるため、どうしても機械的な印象を与えがちです。応募者がリラックスして本来の力を発揮できるよう、面接官は意識的に柔らかい雰囲気を作る必要があります。

具体的には、笑顔を心がける、穏やかな口調で話す、質問と質問の間に適度な雑談を挟むといった工夫が有効です。また、面接の冒頭で会社や仕事内容について説明する時間を設け、応募者の緊張をほぐすことも重要です。

他の評価手法との組み合わせ

構造化面接だけでは、応募者の潜在能力や創造性といった定量化しにくい資質を完全に把握することは困難です。面接の精度をさらに高めるには、適性検査やコンピテンシー診断といったアセスメントツールを併用することが効果的です。

また、一次面接では構造化面接を実施し、二次面接以降は半構造化面接や非構造化面接を取り入れるなど、選考段階に応じて面接手法を使い分ける方法も有効です。グループワークやプレゼンテーションを組み合わせることで、多角的な視点から応募者を評価できます。

採用目的の変化に応じた見直し

事業方針や組織体制の変化に伴い、求める人材像が変わることがあります。特にスタートアップでは事業のフェーズによって必要な人材が大きく変わるため、採用基準や質問内容を柔軟に見直すことが重要です。定期的に評価項目の妥当性を検証し、現在の採用ニーズに合っているか確認しましょう。

まとめ

構造化面接は、事前に設定した質問項目と評価基準に基づいて面接を進める手法です。面接官による評価のばらつきを防ぎ、採用ミスマッチを低減できるため、限られたリソースで確実に成果を上げる人材を採用したいスタートアップに適しています。

導入には質問設計の労力がかかり、機械的な印象を与えるリスクもありますが、採用基準の明確化、評価項目の設定、面接官のトレーニングといったステップを踏むことで効果的に運用できます。行動面接と状況面接を組み合わせた質問を活用し、定期的な見直しを行いながら、自社に最適な採用プロセスを構築しましょう。適性検査など他の評価手法と併用することで、さらに採用精度を高めることが可能です。

本記事が参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

O f All株式会社の編集局です。ファイナンス・資本政策・IPO・経営戦略・成長戦略・ガバナンス・M&Aに関するノウハウを発信しています。

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