レベニューベースファイナンス(RBF)とは?スタートアップの新しい資金調達を解説

この記事でわかること
  • レベニューベースファイナンス(RBF)とは何か
  • RBFが注目される背景
  • RBFの仕組みと2つの返済タイプ
  • RBFのメリット
  • RBFのデメリットと注意点

スタートアップの成長には資金が不可欠ですが、銀行融資は審査が厳しく、VCからの出資は株式の希薄化を伴います。そこで注目されているのが、レベニューベースファイナンス(RBF)です。将来の売上を現金化する新しい資金調達手法として、SaaS企業やD2C企業を中心に活用が広がっています。

本記事では、RBFの仕組みやメリット・デメリット、他の資金調達手段との違い、具体的な利用方法まで徹底解説します。株式を希薄化せずにスピーディーな資金調達を実現したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

レベニューベースファイナンス(RBF)とは何か

将来の売上を現金化する新しい資金調達

レベニューベースファイナンス(RBF:Revenue Based Finance)とは、将来発生する売上の一部を譲渡することで資金を調達する手法です。従来の銀行融資やベンチャーキャピタル(VC)からの出資とは異なり、株式の希薄化を避けながら迅速に資金を確保できる点が特徴となっています。

具体的には、企業が過去の売上データをもとに将来の収益を予測し、その見込み売上を投資家に譲渡する形で現金を受け取ります。調達した企業は、事前に取り決めた総額に達するまで、毎月の売上から一定割合または一定額を返済していく仕組みです。

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エクイティとデットの中間に位置する資金調達

RBFは「デット(借入)でもエクイティ(株式)でもない第三の資金調達」と呼ばれています。銀行融資のように返済義務はありますが、担保や個人保証は不要です。また、VCからの出資のように成長資金を得られますが、株式を譲渡する必要がないため経営の自由度を保てます。

会計上は負債として計上されますが、通常の融資とは異なり残高に応じた利息は発生しません。返済原資も営業利益ではなく売上高や粗利益から支払うため、赤字状態でも利用できる可能性があります。この柔軟性が、成長初期のスタートアップにとって大きな魅力となっています。

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RBFが注目される背景

スタートアップの資金調達における課題

スタートアップ企業、特にシード期やアーリー期の企業は、従来の資金調達手段では十分な資金を確保できないケースが多く存在しました。銀行融資では過去の実績や担保が重視されるため、創業間もない企業は審査通過が困難です。また、VCからの出資を受ける場合は株式の希薄化が避けられず、創業者の経営権が弱まるリスクがあります。

さらに、これらの従来型の資金調達は手続きに時間がかかり、書類準備の負担も大きいという課題がありました。事業成長のスピードが重視されるスタートアップにとって、タイミングを逃すことは致命的となる可能性があります。

リカーリング型ビジネスモデルの拡大

RBFが注目される背景には、サブスクリプション型のSaaSやD2C(Direct to Consumer)など、継続的な収益が見込めるビジネスモデルの普及があります。これらのビジネスでは顧客生涯価値(LTV)が重要な指標となり、将来の売上予測が比較的容易です。

RBFは、こうした予測可能な売上をもとに資金を提供するため、リカーリング型ビジネスと非常に相性が良い資金調達手段といえます。投資家側も売上データから返済能力を判断しやすく、双方にメリットがある仕組みとして支持を集めています。

柔軟な資金調達の選択肢としての位置づけ

RBFは既存の資金調達手段を代替するものではなく、併用できる選択肢として注目されています。大型の設備投資には銀行融資、長期的な成長資金にはVC出資、そして短期的な運転資金や広告投資にはRBFといった使い分けが可能です。こうした柔軟性が、多様な資金ニーズを持つスタートアップから評価されています。

RBFの仕組みと2つの返済タイプ

RBFの基本的な仕組み

RBFでは、企業が将来債権を投資家に譲渡することで資金を調達します。将来債権とは、継続的な取引契約に基づいて将来発生が見込まれる売上を指し、2017年の民法改正により譲渡が可能となりました。

調達した企業は、事前に合意した総返済額に達するまで、毎月の売上から一定の割合または金額を返済します。例えば1,000万円を調達し、手数料が5%の場合、総返済額は1,050万円となります。この金額に達するまで返済を継続する仕組みです。

RBFの手数料相場は提供会社によって異なりますが、おおむね3〜15%程度となっています。審査では将来の売上予測や取引先の信用度が重視され、過去の財務状況よりも事業の継続性や成長性が判断材料となります。

定額型:毎月固定額を返済

定額型は、業績に関わらず毎月一定の金額を返済するタイプです。返済期間は約1年程度に設定されることが一般的で、支払額が固定されているため資金繰りの計画が立てやすくなります。

事業が計画通りに成長すれば、売上に占める返済額の割合は相対的に小さくなっていきます。そのため、急成長を見込むスタートアップに適した方式といえます。ただし、売上が予測を下回った場合は返済負担が大きくなる点に注意が必要です。

変動型:売上に連動して返済

変動型は、毎月の売上に応じて返済額が変動するタイプです。売上が好調な月は返済額が増えて返済期間が短縮され、売上が低調な月は返済額が減少します。

業績の変動に合わせて柔軟に対応できるため、季節変動が大きい業種や売上が安定していない企業に適しています。ただし、業績不振が続くと返済期間が長期化し、事業成長の足かせとなる可能性もあります。

RBFのメリット

スピーディーな資金調達が可能

RBFの最大の魅力は、審査から入金までのスピードです。多くのRBFサービスでは、オンラインで申請が完結し、会計システムや決済データと連携することで迅速な審査が実現されています。最短で申込から1週間以内、サービスによっては翌営業日に入金されるケースもあります。

銀行融資やVCからの調達では数週間から数ヶ月を要することが一般的ですが、RBFは判断に必要な情報が売上データに絞られるため、意思決定が速やかに行われます。事業成長のタイミングを逃さず資金を確保できる点は、スタートアップにとって重要な要素です。

担保・個人保証が不要

RBFでは、銀行融資で求められる担保や個人保証が原則不要です。創業間もない企業や十分な資産を持たないスタートアップでも利用しやすく、経営者が個人資産をリスクにさらす必要がありません。

投資家は担保ではなく、事業の将来性や売上の継続性を評価して資金提供を判断します。このため、精神的な負担を軽減しながら、事業成長に集中できる環境を保てます。

株式の希薄化を回避

VCからの出資と異なり、RBFは株式を譲渡する必要がありません。創業者や既存株主の持分が減少しないため、経営の意思決定における自由度を維持できます。

株式の希薄化を避けることで、将来的なIPOやM&A時に創業者が得られるリターンを最大化できる点も大きなメリットです。また、株主総会での議決権も変わらないため、経営方針を自律的に決定し続けられます。

赤字状態でも利用可能

RBFは営業利益ではなく売上高や粗利益を返済原資とするため、赤字状態でも利用できる可能性があります。成長投資によって一時的に赤字となるスタートアップでも、安定した売上があれば審査対象となります。

この特徴は、Jカーブを描きながら成長するスタートアップにとって特に有効です。利益を出す前の段階でも資金調達の選択肢を持てることは、事業拡大の可能性を大きく広げます。

RBFのデメリットと注意点

一定の売上実績が必要

RBFは将来の売上を前提とした資金調達であるため、ある程度の売上実績や将来債権が存在しないと利用できません。完全な創業期で売上がゼロの状態や、売上の予測が困難な事業モデルでは審査を通過しにくい傾向があります。

また、為替変動や原材料価格の影響を大きく受ける事業、価格変動の激しい商品を扱う事業では、投資家が売上の安定性を懸念し、資金提供を見送るケースもあります。継続的で予測可能な売上があることが、RBF利用の前提条件となります。

資金調達コストが高い傾向

RBFの手数料は3〜15%程度が相場で、銀行融資の金利1〜3%と比較すると高めに設定されています。日本政策金融公庫の融資が2〜3%であることを考えると、RBFのコストは決して低くありません。

ただし、RBFは無担保・無保証で利用でき、審査スピードも速いという付加価値があります。資金調達の緊急性や株式希薄化の回避といったメリットと、コストを総合的に比較して判断する必要があります。短期的な成長投資やつなぎ資金としての活用が適しているでしょう。

調達額が想定より少なくなる可能性

売上規模が小さい段階では、希望する金額を調達できない可能性があります。RBFは将来の売上債権を基に調達額が決定されるため、エンジェル投資家からの出資額よりも少額になるケースも珍しくありません。

ただし、事業が成長して売上が増加すれば、調達可能な金額も拡大していきます。初期は少額でも、段階的にRBFを活用することで必要な資金を確保する戦略も有効です。

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返済計画と事業成長のバランス

定額型を選択した場合、売上が予測を下回ると返済負担が大きくなり、事業運営を圧迫するリスクがあります。変動型を選択した場合でも、業績不振が続けば返済期間が長期化し、新たな資金調達の妨げとなる可能性があります。

RBF利用時には、現実的な売上予測と返済計画を立て、事業成長とのバランスを慎重に検討することが重要です。

他の資金調達手段との比較

銀行融資との違い

銀行融資は営業利益を返済原資とするのに対し、RBFは売上高や粗利益を返済原資とします。このため、赤字でも売上があれば利用できるRBFは、成長初期のスタートアップにとって現実的な選択肢となります。

審査スピードも大きく異なります。銀行融資は審査に1週間から1ヶ月程度かかりますが、RBFは数日から1週間程度で完了します。また、銀行融資では担保や個人保証を求められることが多いのに対し、RBFは原則不要です。ただし、金利面では銀行融資が1〜3%と低く、RBFの3〜15%と比べて有利です。

VCからのエクイティファイナンスとの違い

VCからの出資では株式を譲渡するため、創業者の持分が希薄化し、経営の意思決定に制約が生じる可能性があります。一方、RBFは株式を譲渡しないため、経営の自由度を完全に維持できます。

VCからの調達は返済不要ですが、投資家の期待リターンが高く、IPOやM&Aといった出口戦略を求められます。RBFは返済義務がありますが、事業の成長ペースを自分たちでコントロールできる点が特徴です。また、VCからの調達には数ヶ月を要しますが、RBFは迅速に資金を確保できます。

ファクタリングとの違い

ファクタリングは確定した売掛債権を売却するサービスで、すでにサービス提供が完了している債権が対象となります。一方、RBFは将来債権を扱うため、サービスが未提供でも継続的な取引契約があれば利用可能です。

ファクタリングは売掛債権の金額が調達額の上限となりますが、RBFは将来の売上見込みに基づいて調達額が決まるため、より柔軟な資金調達が可能です。返済期間もファクタリングは短期間に設定されますが、RBFは中期的な返済計画を立てられます。

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補助金・助成金との違い

補助金や助成金は返済不要で魅力的ですが、原則として後払いであり、実際の入金まで数ヶ月かかります。審査期間も長く、採択後に事業を実施し報告する必要があるため、即座に資金が必要な場面には不向きです。

RBFは返済義務がありますが、スピーディーに資金を確保できます。タイミングを重視する成長投資には、RBFの方が適している場合が多いでしょう。

RBFが適している企業とタイミング

RBFと相性が良い業種

RBFは継続的で予測可能な売上が見込める業種に適しています。特にサブスクリプション型のSaaS企業は、月額課金モデルにより将来の売上を正確に予測できるため、RBFとの相性が抜群です。顧客が契約している限り収益が継続するため、投資家も返済能力を判断しやすくなります。

D2C企業もRBFに適した業種です。化粧品や健康食品など定期購入が見込める商品を扱う場合、リピート購入による安定した売上が期待できます。メーカーが消費者と直接取引するため収益性が高く、売上予測も立てやすい特徴があります。

EC事業者も候補となります。デジタルマーケティングを通じて顧客行動を分析でき、在庫管理や仕入れの効率化により売上を予測しやすいためです。季節需要に合わせた仕入れ資金や広告投資にRBFを活用する事例が増えています。

RBF活用に適したタイミング

創業初期で銀行融資の審査が通りにくい段階は、RBFの活用が有効です。担保や実績が不足していても、将来の売上見込みを示せれば資金調達の可能性があります。個人保証も不要なため、経営者の精神的負担を抑えながら事業に集中できます。

VCからの大型調達までのブリッジファイナンスとしても適しています。次回のエクイティラウンドまでの運転資金や広告投資に活用することで、株式の希薄化を最小限に抑えながら成長を加速できます。

広告投資や人材採用など、短期的な成長投資を行いたい時期もRBFの活用タイミングです。VCラウンドほど大きな金額は不要だが、確実に成長につながる施策がある場合、迅速に資金を確保できるRBFが力を発揮します。

また、売上は立っているが利益がまだ出ていないフェーズの企業にも適しています。成長投資のため一時的に赤字となっている状態でも、安定した売上があればRBFを利用できる可能性があります。

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複数の資金調達手段の組み合わせ

RBFは他の資金調達手段と排他的ではなく、組み合わせて活用することが推奨されます。長期的な成長資金はVCから、設備投資は銀行融資から、短期的な運転資金はRBFからと使い分けることで、最適な資本構成を実現できます。

RBF利用の具体的な流れ

申請前の準備

RBFを利用するには、まず自社の売上データを整理し、将来の売上予測を立てることが必要です。過去6ヶ月以上の入出金明細や決算書、継続的な取引契約の内容など、売上の継続性を証明できる資料を準備します。

多くのRBFサービスでは、会計システムや決済システムとの連携が可能です。事前にfreeeやマネーフォワード、Stripeなどのシステムを導入しておくと、審査がスムーズに進みます。データ連携により、手作業での書類作成を大幅に削減できます。

申請から審査まで

RBFサービス提供会社のウェブサイトから申請を行います。基本的な企業情報、希望調達額、売上データなどを入力し、必要書類をアップロードします。オンラインで完結するため、対面での面談や紙の書類提出は原則不要です。

審査では、将来の売上予測の妥当性、取引先の信用度、事業の継続性などが評価されます。提供会社によって異なりますが、審査期間は最短で数営業日、一般的には1〜2週間程度です。銀行融資やVCからの調達と比べて、大幅に時間を短縮できます。

契約と資金化

審査通過後、調達額、返済方法(定額型または変動型)、手数料率、返済期間などの条件について最終調整を行います。条件に合意できれば契約を締結し、指定口座への入金が実行されます。サービスによっては、申込完了から最短翌営業日に入金されるケースもあります。

契約時には、総返済額、毎月の返済額または返済率、返済期間の目安などを明確に確認しましょう。定額型と変動型のどちらが自社の事業特性に合っているかも、慎重に検討する必要があります。

返済の実行

資金調達後は、契約に基づいて毎月返済を行います。多くのサービスでは、決済システムと連携して自動的に返済額が差し引かれる仕組みになっています。定額型であれば毎月固定額が、変動型であれば売上に応じた金額が返済されます。

返済状況はオンラインで随時確認でき、残りの返済額や返済完了予定時期を把握できます。総返済額に達した時点で返済が完了し、契約は終了します。事業が成長すれば、再度RBFを活用して追加の資金調達を行うことも可能です。

まとめ

レベニューベースファイナンス(RBF)は、将来の売上を現金化する新しい資金調達手法として、スタートアップから注目を集めています。株式の希薄化を避けながら、担保や個人保証なしで迅速に資金を確保できる点が最大の魅力です。

特にSaaS企業やD2C企業など、継続的で予測可能な売上がある業種に適しており、創業初期の運転資金や短期的な成長投資に効果を発揮します。ただし、手数料が3〜15%と比較的高く、一定の売上実績が必要な点には注意が必要です。

RBFは銀行融資やVCからの出資を代替するものではなく、併用することで資金調達の選択肢を広げる手段です。自社の事業フェーズや資金ニーズに応じて、最適な資金調達方法を選択しましょう。

本記事が参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

O f All株式会社の編集局です。ファイナンス・資本政策・IPO・経営戦略・成長戦略・ガバナンス・M&Aに関するノウハウを発信しています。

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