フィールドセールスとは?スタートアップ向け実践ガイドと成功のポイント

この記事でわかること
  • フィールドセールスとは
  • フィールドセールスとインサイドセールスの違い
  • スタートアップにフィールドセールスが必要な理由
  • フィールドセールスのメリットとデメリット
  • フィールドセールスの実践5ステップ

フィールドセールスは、顧客を直接訪問して商談を進める営業手法です。オンライン商談が普及した現代でも、対面でのコミュニケーションによる信頼構築や深い課題理解は、特にスタートアップにとって重要な価値を持ちます。

しかし、リソースが限られる中でフィールドセールスを効果的に活用するには、インサイドセールスとの適切な連携や戦略的なアプローチが欠かせません。

本記事では、フィールドセールスの基本からインサイドセールスとの違い、実践ステップ、成功のポイントまで、スタートアップが成約率を高めるための具体的な方法を解説します。

目次

フィールドセールスとは

フィールドセールスとは、営業担当者が顧客や見込み顧客のもとへ直接訪問し、対面で商談を進める営業手法です。訪問型営業や外勤型営業とも呼ばれ、顧客と直接顔を合わせてコミュニケーションを取ることで信頼関係を構築し、最終的な受注・成約につなげることを目的としています。

フィールドセールスの役割

フィールドセールスの主な役割は、マーケティング部門が獲得したリード(見込み顧客)を実際の受注へと転換することです。多くの企業では、マーケティングやインサイドセールスが育成した購入確度の高いリードをフィールドセールスに引き継ぎ、最終的なクロージングまでを担当します。このため、売上に直結する重要なポジションとして位置づけられています。

対面営業の強み

フィールドセールスの最大の強みは、顧客と直接対面できることにあります。相手の表情や反応をリアルタイムで確認しながら商談を進められるため、顧客の本音やニーズを的確に把握することが可能です。また、実物のサンプルを見せたり、その場でデモンストレーションを行ったりすることで、商品やサービスの魅力を具体的に伝えられます。特に高額商材や複雑なサービスを扱うスタートアップにとって、顧客の課題を深く理解し、最適な解決策を提案できる対面営業は依然として重要な営業手法といえるでしょう。オンライン商談が普及した現在でも、重要な契約の局面では対面での信頼構築が成約率を左右するケースが多く存在します。

フィールドセールスとインサイドセールスの違い

フィールドセールスとインサイドセールスは、どちらも営業活動において重要な役割を担いますが、アプローチ方法や目的が大きく異なります。両者の違いを理解することで、自社に適した営業体制を構築できます。

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営業手法の違い

フィールドセールスは顧客先へ直接訪問し、対面で商談を行う訪問型営業です。一方、インサイドセールスは電話やメール、Web会議ツールなどを活用し、オフィスから非対面で営業活動を展開する内勤型営業です。ィールドセールスは移動時間やコストがかかる反面、顧客との深い信頼関係を築きやすい特徴があります。インサイドセールスは物理的な移動が不要なため、短期間で多くの顧客にアプローチできる効率性が魅力です。

担当する営業プロセスの違い

両者は営業プロセスにおいて異なる役割を担います。インサイドセールスは主にリードの獲得から育成、選別までを担当し、購入意欲を高める活動に注力します。具体的には、問い合わせへの初期対応や定期的なフォローアップを通じて、見込み顧客の温度感を上げていきます。対してフィールドセールスは、購入確度が高まったリードに対して訪問し、詳細な提案やクロージングを行い、最終的な受注獲得を目指します。この役割分担により、効率的な営業活動が可能になります。

設定されるKPIの違い

評価指標も両者で異なります。フィールドセールスは受注数や売上額、成約率など、最終的な成果に直結する指標がKPIとして設定されます。一方、インサイドセールスは商談化数や商談パス率、リード育成数など、フィールドセールスへ質の高いリードを引き渡すための指標が重視されます。スタートアップでは限られたリソースで成果を最大化するため、両者の連携を前提とした適切なKPI設定が成功の鍵となります。

スタートアップにフィールドセールスが必要な理由

デジタル化が進む現代においても、スタートアップにとってフィールドセールスは重要な営業手法です。特に事業の初期段階では、対面でのコミュニケーションが持つ価値は大きく、以下のような理由から必要性が高まっています。

顧客の深い課題理解と信頼構築

スタートアップが提供する製品やサービスは、既存市場にない新しい価値であることが多く、顧客自身も明確なニーズを自覚していないケースがあります。フィールドセールスでは対面での対話を通じて、顧客の潜在的な課題を深く掘り下げることができます。表情や仕草から感じ取れる微妙な反応を捉え、その場で柔軟に提案内容を調整することで、顧客の本質的なニーズに応える解決策を提示できます。また、知名度の低いスタートアップにとって、直接会って誠実に向き合う姿勢を示すことは、信頼関係構築の重要な第一歩となります。

複雑な提案を効果的に伝達できる

スタートアップの製品は革新的である一方、その価値や使い方を理解してもらうには丁寧な説明が必要です。フィールドセールスなら、実物のデモンストレーションや詳細な資料を用いながら、顧客の理解度に合わせて説明を調整できます。オンラインでは伝わりにくい細かなニュアンスも、対面なら効果的に伝達可能です。特にBtoB向けの高単価商材や導入に複数の意思決定者が関わる場合、対面での提案力が成約を左右します。

市場フィードバックを直接獲得できる

事業の初期段階では、顧客の生の声を収集し、製品改善に活かすことが不可欠です。フィールドセールスでは商談の前後に交わす会話から、顧客の業界動向や競合情報、製品への率直な意見など、貴重なフィードバックを得られます。こうした現場の声は、プロダクト開発やマーケティング戦略の精度を高め、スタートアップの成長を加速させる重要な情報源となります。

フィールドセールスのメリットとデメリット

フィールドセールスを導入する際は、メリットとデメリットの両面を理解した上で、自社の状況に合わせた判断が必要です。特にリソースが限られるスタートアップでは、効果を最大化するための戦略的な活用が求められます。

フィールドセールスのメリット

対面でのコミュニケーションにより、顧客との強固な信頼関係を構築できることが最大のメリットです。直接会うことで誠実さや熱意が伝わりやすく、長期的な取引関係の基盤を作れます。また、顧客の表情や反応をリアルタイムで観察できるため、提案内容への興味度や懸念点を即座に察知し、その場で対応を調整できます。実物のサンプルやデモを活用することで、商品やサービスの魅力を具体的に伝えられる点も強みです。さらに、商談の前後で交わす何気ない会話から、意思決定者の情報や競合動向、顧客の本音など、オンラインでは得られない貴重な情報を収集できます。こうした情報は営業戦略の改善や製品開発に活かせる重要な資産となります。

フィールドセールスのデメリット

移動時間とコストがかかることが主なデメリットです。訪問には交通費や場合によっては宿泊費が発生し、移動時間も営業活動に充てられません。そのため、1日に対応できる商談数が限られ、インサイドセールスと比べて効率性は低下します。スタートアップでは営業人員が少ないケースが多く、全ての見込み顧客に訪問することは現実的ではありません。また、天候や交通トラブルなど外的要因により、予定通りに商談が進まないリスクもあります。さらに、営業担当者が外出中は社内での情報共有が遅れがちで、チーム全体での顧客対応に支障が出る可能性があります。これらのデメリットを軽減するには、訪問すべき顧客を厳選し、インサイドセールスとの適切な役割分担を設計することが重要です。

フィールドセールスの実践5ステップ

フィールドセールスを成功させるには、計画的なアプローチが不可欠です。ここでは、訪問前の準備から訪問後のフォローまで、効果的な営業活動を実現する5つのステップを解説します。

ステップ1:事前リサーチと準備

訪問前には徹底的な情報収集が重要です。顧客企業の事業内容や業界動向、過去の取引履歴を調査し、抱えている課題を予測します。インサイドセールスから引き継いだ場合は、これまでのやり取りや顧客の関心事項を詳細に確認しましょう。また、訪問の目的と達成すべきゴールを明確に設定し、必要な資料やデモ環境を準備します。想定される質問への回答や、複数の提案パターンを用意しておくことで、当日の商談をスムーズに進められます。

ステップ2:訪問スケジュールの調整

顧客とのアポイント調整では、相手の都合を最優先しつつ、訪問の目的を明確に伝えます。複数の顧客を訪問する場合は、地理的な位置関係を考慮し、移動時間を最小限に抑える効率的なルートを設計しましょう。スタートアップでは限られた時間を有効活用するため、1日の訪問計画を綿密に立てることが求められます。

ステップ3:顧客先での商談実施

訪問時は第一印象を大切にし、誠実で丁寧な対応を心がけます。まずはヒアリングを通じて顧客の現状や課題を深く理解し、その上で自社の提案を行います。相手の反応を観察しながら、説明の深度や提案内容を柔軟に調整することが重要です。デモや資料を効果的に活用し、顧客が具体的にイメージできる提案を目指しましょう。

ステップ4:クロージングと次のアクション設定

商談の終盤では、顧客の懸念点を丁寧に解消し、次のステップを明確にします。契約に進む場合は具体的なスケジュールを、追加検討が必要な場合は次回の面談日程を設定します。曖昧な状態で終わらせず、必ず次のアクションを合意することが大切です。

ステップ5:訪問後のフォローアップ

訪問後は速やかにお礼のメールを送り、商談内容の要点や約束した事項を確認します。資料の送付など約束した対応は迅速に実行し、信頼を積み重ねます。また、商談内容を社内で共有し、次回の提案に活かす体制を整えましょう。

フィールドセールスを成功させる3つのポイント

フィールドセールスの成果を最大化するには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、スタートアップが限られたリソースで効果を上げるための3つのポイントを解説します。

ポイント1:顧客の本質的なニーズを引き出す

フィールドセールスの成功は、顧客の本質的な課題を正確に把握することから始まります。表面的な要望だけでなく、その背景にある根本的な問題を理解するために、効果的な質問を投げかけましょう。オープンクエスチョンを活用して顧客に自由に語ってもらい、相手の言葉の裏にある真意を読み取る力が求められます。また、顧客の業界知識や事業理解を深めることで、より的確な課題把握が可能になります。ニーズを正確に捉えることで、競合他社との差別化につながる提案ができ、成約率の向上が期待できます。

ポイント2:第一印象で信頼を獲得する

対面営業では、最初の数分で決まる第一印象が商談の成否を左右します。清潔感のある身だしなみ、明るい挨拶、適切な言葉遣いを心がけ、相手に好印象を与えることが重要です。特にスタートアップの営業担当者は企業の顔として見られるため、プロフェッショナルな姿勢を示すことで会社全体への信頼につながります。また、商談の冒頭では相手の緊張をほぐし、リラックスした雰囲気を作ることも大切です。アイスブレイクとして軽い雑談を交えることで、その後の本題がスムーズに進みやすくなります。誠実で親しみやすい対応を通じて、長期的な関係構築の基盤を作りましょう。

ポイント3:迅速で丁寧なフォローアップを徹底する

訪問後のフォローアップの質が、最終的な成約を左右します。商談後24時間以内にお礼のメールを送り、話し合った内容や次のアクションを明確に記載しましょう。約束した資料の送付や追加情報の提供は、期日を守って迅速に対応することで信頼を積み重ねられます。また、定期的なコミュニケーションを継続し、顧客の検討状況に応じた適切なフォローを行うことが重要です。スタートアップでは顧客との接点を最大限活かす必要があるため、フォローアップの仕組み化やツール活用により、確実な対応体制を構築しましょう。

インサイドセールスとの効果的な連携方法

フィールドセールスとインサイドセールスの連携は、営業効率と成約率を同時に高める重要な戦略です。特にリソースが限られるスタートアップでは、両者の役割を明確にし、効果的に連携することが成功の鍵となります。

基本的な連携フローの構築

効果的な連携の基本は、営業プロセスを明確に分業することです。一般的には、インサイドセールスがリードの獲得から育成、選別までを担当し、購入確度が高まった段階でフィールドセールスに引き継ぎます。インサイドセールスは電話やメールで継続的にコミュニケーションを取り、顧客の温度感を高めながら、BANT情報(予算・決裁権・ニーズ・導入時期)を収集します。購入意欲が十分に高まったホットリードをフィールドセールスに渡すことで、訪問営業のリソースを重要な商談に集中させられます。この分業により、インサイドセールスは効率的に多くの見込み顧客にアプローチでき、フィールドセールスは成約確度の高い商談に注力できる体制が実現します。

リード情報の徹底的な共有

連携の質を左右するのが、リード情報の共有精度です。インサイドセールスは、これまでの顧客とのやり取り内容、興味を示したポイント、懸念事項、競合検討状況などを詳細にフィールドセールスへ引き継ぐ必要があります。情報共有が不十分だと、フィールドセールスが顧客の期待と異なるアプローチをしてしまい、失注につながる恐れがあります。SFAやCRMなどのツールを活用し、顧客情報を一元管理することで、リアルタイムでの情報共有が可能になります。また、定期的なミーティングを設定し、両チーム間で認識のずれがないか確認することも重要です。

双方向のフィードバック体制

連携を継続的に改善するには、フィールドセールスからインサイドセールスへのフィードバックが欠かせません。商談結果や顧客の反応、成約に至った要因や失注理由を共有することで、インサイドセールスはリード育成の精度を高められます。また、現場で得た顧客の生の声や業界トレンドを伝えることで、インサイドセールスのアプローチ方法の改善にもつながります。この双方向のコミュニケーションにより、営業組織全体の成果向上が期待できます。

スタートアップがフィールドセールスで注意すべきこと

スタートアップがフィールドセールスを展開する際は、限られたリソースを最大限活用するために特有の注意点があります。ここでは、失敗を避け、効率的に成果を上げるための重要なポイントを解説します。

訪問すべき顧客を厳選する

スタートアップでは営業人員が限られているため、全ての見込み顧客に訪問することは非効率です。訪問すべき顧客を明確な基準で選別することが重要になります。具体的には、購入確度が高い、契約金額が大きい、将来的に重要な顧客になる可能性があるなど、優先順位をつけて訪問先を決定しましょう。むやみに訪問件数を増やすのではなく、成約可能性の高い商談に集中することで、限られたリソースで最大の成果を生み出せます。また、訪問と非訪問の判断基準を社内で共有し、属人的な判断を避ける仕組みづくりも必要です。

コストと時間の管理を徹底する

フィールドセールスには交通費や宿泊費などの直接コストに加え、移動時間という機会コストも発生します。スタートアップでは資金が潤沢でないケースが多いため、訪問にかかるコストを常に意識し、費用対効果を検証することが求められます。遠方の顧客への訪問は複数の商談をまとめて設定する、初回はオンライン商談で関係構築してから訪問を検討するなど、効率的な営業活動を設計しましょう。また、移動時間を有効活用するために、移動中に次の商談準備や顧客情報の整理を行うなど、時間管理の工夫も大切です。

属人化を防ぐ情報共有の仕組み

フィールドセールスでは営業担当者が単独で顧客対応を行うため、情報が個人に集中しやすく、属人化のリスクが高まります。スタートアップでは少人数で運営しているケースが多く、担当者の退職や異動が事業に与える影響が大きくなります。そのため、商談内容や顧客情報を必ずツールに記録し、組織全体で共有する体制を整えることが不可欠です。SFAやCRMを活用し、訪問前後の情報を確実に入力するルールを設定しましょう。また、定期的な営業会議で成功事例や失敗事例を共有することで、組織全体の営業力向上にもつながります。情報の透明性を保つことで、チームとして顧客対応の質を高められます。

まとめ

フィールドセールスは、顧客との対面コミュニケーションを通じて信頼関係を構築し、成約につなげる重要な営業手法です。スタートアップにとっては、顧客の深い課題理解や市場フィードバックの獲得など、事業成長に不可欠な価値をもたらします。ただし、限られたリソースで成果を最大化するには、訪問すべき顧客の厳選やコスト管理が重要です。インサイドセールスとの効果的な連携により、リード育成から成約までの営業プロセス全体を最適化できます。本記事で紹介した実践ステップや成功のポイントを参考に、自社の状況に合わせたフィールドセールス戦略を構築し、持続的な営業成果の向上を目指しましょう。

本記事が参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

O f All株式会社の編集局です。ファイナンス・資本政策・IPO・経営戦略・成長戦略・ガバナンス・M&Aに関するノウハウを発信しています。

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