- インサイドセールスとは何か
- スタートアップがインサイドセールスを導入すべき理由
- インサイドセールスとフィールドセールス・テレアポの違い
- インサイドセールスの2つの種類(SDRとBDR)
- インサイドセールスのメリットとデメリット
営業リソースが限られるスタートアップにとって、効率的な営業体制の構築は成長のポイントとなります。インサイドセールスは、電話やメール、Web会議などを活用した非対面の営業手法であり、少人数でも多くの見込み顧客にアプローチできる仕組みです。
本記事では、インサイドセールスの基礎知識から、スタートアップが導入すべき理由、具体的な始め方、成功のポイントまでを解説します。営業効率を高め、成約率を向上させたいスタートアップ経営者や営業責任者の方は、ぜひ参考にしてください。
インサイドセールスとは何か
インサイドセールスの定義
インサイドセールスとは、電話やメール、Web会議ツールなどを活用して、オフィスにいながら行う営業活動のことです。顧客先を直接訪問するフィールドセールスとは異なり、非対面で見込み顧客との接点を持ち続け、商談機会を創出する役割を担います。
従来の営業スタイルでは、一人の営業担当者がリード獲得から商談、クロージング、アフターフォローまでのすべてを担当していました。しかしインサイドセールスを導入することで、営業プロセスを分業化し、それぞれの段階に専念できる体制を構築できます。
インサイドセールスの主な役割
インサイドセールスの主な役割は、マーケティング部門が獲得した見込み顧客に対してアプローチし、購買意欲を高めながら商談機会を生み出すことです。具体的には、見込み顧客の課題やニーズをヒアリングし、適切なタイミングで情報提供を行いながら関係性を構築します。
また、見込み顧客の検討度合いを見極め、商談に進むべきタイミングでフィールドセールスへ引き継ぐ判断も重要な業務です。この過程で顧客情報を整理・管理し、次のステップへスムーズに連携できる環境を整えます。
スタートアップにおいては、限られた営業リソースを最大限活用するために、インサイドセールスが見込み顧客の優先順位付けを行い、確度の高い商談にフィールドセールスが集中できる仕組みを作ることが重要です。こうした分業体制により、少人数でも効率的に営業活動を展開できます。
スタートアップがインサイドセールスを導入すべき理由
限られたリソースでも効率的な営業活動が可能
スタートアップの多くは、営業人員が限られているという課題を抱えています。インサイドセールスを導入すれば、移動時間やコストを削減しながら、一人で複数の見込み顧客に同時並行でアプローチできます。訪問営業では1日に対応できる顧客数に限界がありますが、非対面のインサイドセールスなら、より多くの見込み顧客と接点を持つことが可能です。
また、営業プロセスを分業化することで、各担当者が自身の役割に集中でき、少人数でも組織全体の生産性を高められます。特に創業初期のスタートアップにとって、この効率性は大きな競争優位性となります。
スピーディな顧客対応で機会損失を防ぐ
スタートアップが成長するためには、問い合わせや資料請求があった見込み顧客に対して、素早くアプローチすることが不可欠です。インサイドセールスは社内にいながら即座に対応できるため、見込み顧客の関心が高いタイミングを逃しません。
市場調査によれば、放置された見込み顧客の約8割が2年以内に競合から製品を購入しているというデータもあります。リソースが限られるスタートアップこそ、獲得した見込み顧客を確実にフォローし、機会損失を防ぐ体制が必要です。
営業活動のデータ化による改善サイクルの構築
インサイドセールスでは、顧客とのやり取りや商談化率などのデータを蓄積できます。これにより、どのようなアプローチが効果的か、どのタイミングで商談化しやすいかなど、データに基づいた営業戦略の改善が可能です。スタートアップにとって、こうした素早いPDCAサイクルは成長の鍵となります。
インサイドセールスとフィールドセールス・テレアポの違い
フィールドセールスとの違い
フィールドセールスは、顧客先を訪問またはWeb会議で商談を行い、提案からクロージングまでを担当する営業スタイルです。一方、インサイドセールスは商談前の段階で見込み顧客との関係構築や商談機会の創出を担います。
従来の営業では一人の担当者がすべてのプロセスを担当していましたが、現在は営業プロセス上の役割で両者を区別する傾向が強まっています。インサイドセールスがマーケティング部門から引き継いだ見込み顧客に初期接触を行い、購買意欲を高めた段階でフィールドセールスへ引き継ぎます。フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中できるため、成約率の向上が期待できます。
なお、商談が不成立となった場合は、その情報が再びインサイドセールスに戻され、将来的な機会を見据えた継続的なフォローが行われます。このように両者が密に連携することで、営業活動全体の成果を最大化できます。

テレアポとの違い
テレアポは、顧客リストに対して大量に電話をかけ、短期間でアポイント獲得を目指す手法です。一方、インサイドセールスは見込み顧客一人ひとりの課題や興味に合わせて、中長期的にコミュニケーションを重ねながら購買意欲を高めていきます。
テレアポのKPIは架電件数やアポ獲得件数が中心ですが、インサイドセールスは見込み顧客の育成や商談化率を重視します。また、テレアポは一度断られたら追いかけないケースが多いのに対し、インサイドセールスは継続的なフォローを通じて関係性を構築します。
つまり、テレアポが「量」を重視するのに対し、インサイドセールスは「質」を重視した営業活動といえます。スタートアップにとっては、限られたリソースで成約につながりやすい見込み顧客を育成できるインサイドセールスの方が、効率的な営業手法となります。
インサイドセールスの2つの種類(SDRとBDR)
SDR(反響型インサイドセールス)とは
SDRは「Sales Development Representative」の略で、反響型またはPULL型のインサイドセールスと呼ばれます。自社Webサイトからの問い合わせや資料請求、セミナー参加者など、すでに自社に興味を示している見込み顧客に対してアプローチする手法です。
ターゲットとなるのは、自社の製品やサービスを認知しており、購買意欲が比較的高い顕在層です。そのため、担当者への直接的な電話やメール、メルマガ配信などを通じて、スピーディに関係構築を進められます。見込み顧客側からアクションがあった状態でアプローチするため、商談化率が高く、効率的に成果を出しやすいのが特徴です。
スタートアップの初期段階では、まずSDRから始めることで、限られたリソースでも確実に成果を積み上げられます。
BDR(新規開拓型インサイドセールス)とは
BDRは「Business Development Representative」の略で、新規開拓型またはPUSH型のインサイドセールスと呼ばれます。まだ自社を認知していない潜在層に対して、こちらから積極的にアプローチする手法です。
ターゲットは営業リストや公開情報から選定した企業で、代表電話への架電やキーパーソンへのDMなど、能動的な営業活動を行います。相手の購買意欲は不明な状態からスタートするため、SDRと比較すると商談化までのハードルは高くなります。
ただし、BDRは自社にとって戦略的に重要な企業や、大きな成果が期待できる企業に狙いを定めてアプローチできるメリットがあります。一社一社に対して丁寧なリサーチとアプローチを重ねるため、工数はかかりますが、受注時のインパクトが大きい案件を獲得できる可能性があります。
スタートアップでは、事業が軌道に乗り、リソースに余裕が出てきた段階でBDRに取り組むことで、より戦略的な営業展開が可能になります。
インサイドセールスのメリットとデメリット
インサイドセールスのメリット
インサイドセールス導入の最大のメリットは、営業コストを大幅に削減できることです。顧客先への移動時間や交通費、宿泊費などが不要になるため、限られた予算で運営するスタートアップにとって大きな利点となります。また、移動時間が削減される分、より多くの見込み顧客にアプローチでき、営業活動の生産性が向上します。
さらに、営業プロセスの分業化により、フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中できるため、成約率の向上が期待できます。インサイドセールスが見込み顧客の育成や優先順位付けを行うことで、営業リソースを最適に配分できる体制が構築されます。
加えて、顧客とのやり取りや商談化率などのデータを蓄積しやすく、営業活動の標準化や改善サイクルの構築が可能です。これにより属人化を防ぎ、担当者の異動や退職時にも組織として営業力を維持できます。リモートワークにも対応しやすいため、多様な働き方を実現しながら人材を確保できる点も、スタートアップには重要なメリットです。
インサイドセールスのデメリット
インサイドセールス導入のデメリットは、適切な組織運営と情報共有の仕組みが必要になることです。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの各部門間で顧客情報を正確に共有できなければ、連携ミスが発生し、顧客との信頼関係を損ねる可能性があります。そのため、CRMやSFAなどのツール導入と運用ルールの整備が欠かせません。
また、非対面でのコミュニケーションが中心となるため、対面営業と比べて顧客との信頼関係を構築するのに時間がかかる場合があります。電話やメールでは相手の反応を読み取りにくく、商品やサービスの魅力を十分に伝えきれないケースも考えられます。
さらに、インサイドセールス担当者のスキルや経験によって成果が左右されやすく、初期段階では適切な人材確保や育成に工数がかかります。スタートアップでは、こうしたデメリットを理解した上で、段階的に体制を整えていくことが重要です。
スタートアップがインサイドセールスを始める手順

手順1:目的と目標を明確にする
インサイドセールスを導入する前に、まず何のために導入するのか目的を明確にしましょう。新規顧客の獲得数を増やしたいのか、商談化率を向上させたいのか、それとも既存顧客のフォロー体制を強化したいのか、目的によって取るべきアプローチは変わります。
目的が定まったら、具体的な目標数値(KPI)を設定します。インサイドセールスにおける代表的なKPIは、架電数、獲得商談数、商談化率などです。ただし、立ち上げ初期は高すぎる目標設定を避け、現実的な数値から始めることが重要です。達成可能な目標を積み重ねることで、チームのモチベーション維持にもつながります。
手順2:ターゲットと営業プロセスを定義する
自社の製品やサービスがどのような企業や担当者にニーズがあるのか、ターゲット像を明確にします。既存顧客の特徴を分析し、業界、企業規模、抱えている課題などを洗い出すことで、アプローチすべき見込み顧客の優先順位が明確になります。
次に、マーケティングからインサイドセールス、フィールドセールスへの連携フローを設計します。どの段階でインサイドセールスがアプローチを開始し、どのような条件を満たせばフィールドセールスへ引き継ぐのか、具体的な基準を設けましょう。この基準が曖昧だと、部門間の連携がスムーズに進まず、成果につながりません。
手順3:必要なツールを導入する
効率的なインサイドセールス活動には、CRMやSFA、MAツールなどの導入が欠かせません。これらのツールを活用することで、顧客情報の一元管理、アプローチ履歴の記録、部門間の情報共有がスムーズになります。
スタートアップの場合、初期段階では無料プランや低価格で始められるツールから導入し、事業の成長に合わせて機能を拡張していく方法がおすすめです。ツールの選定では、操作性やサポート体制も重視しましょう。
手順4:実施・測定・改善のサイクルを回す
インサイドセールスを開始したら、設定したKPIを定期的に測定し、目標達成度を確認します。なぜ目標を達成できたのか、またはできなかったのか、チーム全体で振り返りを行い、改善点を洗い出しましょう。
アプローチのタイミング、トークスクリプト、フィールドセールスへの引き継ぎ基準など、継続的に見直しを行うことで、インサイドセールスの精度が高まります。
インサイドセールス成功のポイント
ポイント1:フィールドセールスとの密な連携
インサイドセールスを成功させるには、フィールドセールスとの連携が不可欠です。インサイドセールスが見込み顧客から引き出した課題やニーズ、これまでのコミュニケーション履歴などを正確にフィールドセールスへ共有することで、商談の質が向上します。
また、商談後のフィードバックをインサイドセールスへ戻すことも重要です。どのような見込み顧客が成約につながりやすいのか、逆にどのような条件では成約が難しいのかを共有することで、インサイドセールスの見極め精度が高まります。定期的なミーティングを設け、両部門が情報交換できる場を設けましょう。
ポイント2:見込み顧客の優先順位付けとセグメント化
すべての見込み顧客に同じアプローチをするのではなく、購買意欲や検討段階に応じて優先順位をつけることが重要です。問い合わせ直後の関心が高い見込み顧客には即座に電話でアプローチし、まだ検討初期段階の見込み顧客には定期的なメール配信で関係を維持するなど、状況に応じた対応を行います。
MAツールを活用すれば、Webサイトの閲覧履歴やメール開封率などから見込み顧客の関心度を可視化でき、効率的なセグメント化が可能です。限られたリソースで最大の成果を出すために、優先度の高い見込み顧客から順番にアプローチしましょう。
ポイント3:顧客視点に立ったコミュニケーション
インサイドセールスは非対面のため、一方的な売り込みと受け取られないよう注意が必要です。見込み顧客の課題やニーズを丁寧にヒアリングし、それに対して有益な情報を提供する姿勢が信頼関係の構築につながります。
単にアポイント獲得を目指すのではなく、見込み顧客にとって価値のある情報提供を心がけることで、中長期的な関係構築が可能になります。業界動向や成功事例など、見込み顧客の意思決定に役立つコンテンツを準備しておきましょう。
ポイント4:データに基づく継続的な改善
インサイドセールスの活動データを蓄積し、定期的に分析することで、成果につながるパターンを発見できます。どの時間帯の架電が効果的か、どのようなトークが商談化につながりやすいかなど、データから得られた知見をチーム全体で共有し、営業活動の標準化を進めましょう。
また、失敗事例からも学びを得ることが重要です。成功と失敗の両方を分析し、PDCAサイクルを回すことで、スタートアップでも短期間で営業力を高められます。
まとめ
インサイドセールスは、限られたリソースで効率的に営業活動を展開できる手法として、スタートアップに適した営業スタイルです。非対面でのアプローチにより移動コストを削減しながら、多くの見込み顧客との接点を持ち続けることができます。
導入にあたっては、目的と目標の明確化、ターゲットの定義、ツールの整備、そして継続的な改善サイクルの構築が重要です。また、フィールドセールスとの密な連携や、見込み顧客の優先順位付けなど、成功のポイントを押さえることで、少人数でも成果を最大化できます。
自社の成長段階やリソースに応じて、まずはSDRから始め、段階的に体制を整えていくことをおすすめします。インサイドセールスを戦略的に活用し、営業組織の生産性向上を実現しましょう。
本記事が参考になれば幸いです。

