- レイターステージとは?
- レイターステージの企業が抱える3つの特徴
- レイターステージにおける資金調達の実態
- レイターステージで求められる組織体制の変化
- レイターステージからイグジットまでの道筋
スタートアップの成長過程において、レイターステージは最終段階に位置づけられる重要なフェーズです。事業が軌道に乗り、安定的な収益基盤を確立したこの段階では、IPOやM&Aといったイグジット戦略が現実的な選択肢となります。
本記事では、レイターステージの定義から、企業が抱える特徴、資金調達の実態、組織体制の変化、そしてイグジットまでの道筋まで、スタートアップ経営者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。シードからミドルまでの各ステージとの違いも明確にすることで、自社の現在地と今後の方向性を見極める一助となれば幸いです。
レイターステージとは?
レイターステージの基本定義
レイターステージ(Later Stage)とは、スタートアップの成長過程における最終段階を指します。シード、アーリー、ミドルに続く第4段階として位置づけられ、事業が本格的に軌道に乗り、安定的な収益基盤を確立した状態を表します。
この段階では、企業としての組織体制が整い、経営の安定化が進んでいることが特徴です。単月黒字だけでなく単年での黒字化を実現し、持続的な成長軌道に入っている企業が該当します。
レイターステージ企業の現状
レイターステージに到達した企業は、IPOやM&Aといったイグジット戦略を具体的に検討し始める時期に入ります。既存事業の拡大に加えて、新規事業や関連事業への投資を検討するケースも多く見られます。
従業員規模は業種によって異なりますが、一般的に30人以上、場合によっては100人を超える規模へと成長しています。社会的な信用も高まり、金融機関からの融資やベンチャーキャピタルからの大型調達が比較的容易になる段階といえます。
事業面では、主力サービスが市場で確固たる地位を築き、安定的なキャッシュフローを生み出している状態です。この段階でさらなる成長を目指すのか、IPOのタイミングを見極めるのか、経営の重要な意思決定が求められる局面でもあります。
レイターステージの企業が抱える3つの特徴
特徴1:安定的な収益構造の確立
レイターステージ企業の最大の特徴は、安定した収益基盤が構築されていることです。単月黒字化を超えて単年での黒字化を達成し、持続的なキャッシュフローを生み出しています。損益分岐点を明確に超え、事業の収益性が証明された状態といえます。
この段階では、主力事業が市場で確固たる地位を築き、継続的な売上成長が見込める状態になっています。赤字前提で成長を追求するアーリーやミドルステージとは異なり、収益性と成長性のバランスを重視した経営が求められます。
特徴2:組織体制の本格的な整備
レイターステージでは、企業としての組織体制が大きく変化します。従業員数は30人以上、業種によっては100人を超える規模へと拡大し、バックオフィス機能の強化が不可欠になります。
具体的には、経営管理室や法務部といった管理部門の創設、人事評価制度や福利厚生制度の整備が進められます。IPOを視野に入れる企業では、上場準備室の設置も検討される時期です。多様化する人材を円滑にマネジメントするため、組織運営の仕組み化が重要な課題となります。
特徴3:イグジット戦略の具体化
レイターステージ企業は、IPOやM&Aといった出口戦略を現実的に検討する段階に入ります。既存事業の拡大路線を継続するのか、新規事業への投資を行うのか、あるいは上場のタイミングをいつにするのか、経営陣には重要な意思決定が求められます。
社会的信用が高まることで、大規模なマーケティング投資やマスメディアを活用したプロモーション展開も可能になり、企業価値をさらに高める選択肢が広がります。

レイターステージにおける資金調達の実態
主な資金調達方法と選択肢
レイターステージでは、複数の資金調達手段から最適な方法を選択できるようになります。代表的な調達方法として、ベンチャーキャピタルからのエクイティ投資、民間金融機関によるプロパー融資、地方自治体・信用保証協会・金融機関が連携した制度融資、さらに公的な補助金・助成金の活用が挙げられます。
この段階では企業の信用力が高まっているため、金融機関の融資条件を容易にクリアできるケースが多くなります。ミドルステージと比較しても、資金調達の難易度は大幅に低下し、より有利な条件での調達が可能になる点が特徴です。
投資ラウンドと調達額の相場
レイターステージにおける投資ラウンドは、一般的にシリーズD以降となります。この段階での資金調達額の相場は数十億円規模に達し、他のステージと比較して圧倒的に大きな金額となります。
主な投資家はベンチャーキャピタルに加え、金融系VCや政府系VCも参入してきます。事業の成熟度と拡大傾向が明確であることから、複数のVCからの大型調達や、大手企業との資本業務提携による資金調達も現実的な選択肢となります。

資金調達に要する期間と注意点
レイターステージでの資金調達には、相応の時間を見込む必要があります。ベンチャーキャピタルからの調達では半年以上、金融機関からの融資では審査に数カ月程度を要するケースが一般的です。
補助金・助成金については、手続きの複雑さから入金までさらに長期化する傾向があります。専門家への相談も含めると、計画的なスケジュール管理が不可欠です。市場動向の変化に備えた資金確保という観点からも、早めの準備開始が推奨されます。
レイターステージで求められる組織体制の変化
管理部門の本格的な強化
レイターステージでは、事業拡大に伴い管理機能の強化が重要な経営課題となります。経営管理室や法務部といった専門部門の新設が進み、企業統治の基盤を整える時期に入ります。
従業員数が30人以上、業種によっては100人を超える規模になると、組織運営の複雑さが増します。人材の多様化に対応するため、人事評価制度の整備、福利厚生の充実、コンプライアンス体制の構築など、制度面での整備が不可欠です。これらの管理機能強化により、組織を円滑に運営し、イグジットに向けた準備を進めることが可能になります。
IPOを見据えた上場準備体制
IPOを本格的に目指す企業では、上場準備室の設置が視野に入ります。上場には厳格な審査基準があり、財務報告体制の整備、内部統制の構築、コーポレートガバナンスの強化が求められます。
この段階では、公認会計士や監査法人との連携、主幹事証券会社の選定など、専門家のサポートを受けながら準備を進めるケースが一般的です。上場準備には通常2年から3年程度を要するため、早期からの計画的な取り組みが成功の鍵となります。
バックオフィス人材の採用強化
レイターステージでは、ミドルステージまでの大量採用と比較すると採用ペースは落ち着きますが、質的な変化が見られます。特にバックオフィスやコーポレート部門の専門人材の採用が増加する傾向にあります。
財務・経理、法務、人事、広報といった機能を担うプロフェッショナル人材の確保が、企業の成長を持続させる重要な要素となります。また、経営陣の強化として、CFOやCHROといったCxOレベルの幹部人材を外部から招聘するケースも多く見られます。組織の成熟度を高めることで、次のステージへの移行をスムーズに進めることができます。

レイターステージからイグジットまでの道筋
IPOによる株式上場の選択
レイターステージ企業にとって、IPO(新規株式公開)は最も一般的なイグジット手段の一つです。株式市場への上場により、創業者や初期投資家は保有株式の流動性を獲得し、企業は公開市場から継続的な資金調達が可能になります。
IPOを実現するには、一定以上の売上規模と収益性、健全なガバナンス体制、透明性の高い財務報告体制が求められます。上場準備には通常2年から3年を要し、監査法人や証券会社との連携のもと、段階的に体制を整備していきます。上場後は社会的信用が大きく向上し、優秀な人材の獲得や事業提携の機会が広がる利点があります。
M&Aによる事業売却の判断
M&A(企業の合併・買収)も、レイターステージ企業の重要なイグジット選択肢です。大手企業や競合他社への事業売却により、創業者や投資家は短期間でリターンを得ることができます。
M&Aは、IPOと比較して準備期間が短く、市場環境の影響を受けにくいメリットがあります。特に、技術力や顧客基盤に魅力を感じた企業から好条件での買収提案を受けるケースも少なくありません。一方で、企業の独立性を失う可能性や、従業員の処遇変更といった課題も考慮する必要があります。
イグジット戦略の最適なタイミング
イグジットの成功には、タイミングの見極めが極めて重要です。市場環境、競合状況、自社の成長曲線を総合的に判断し、企業価値が最大化するタイミングを選択する必要があります。
継続的な成長が見込める場合は、さらなる事業拡大を優先し、イグジットを先延ばしにする選択もあります。逆に、市場の成熟化や競争激化が予想される場合は、早期のイグジットが有利に働くこともあります。経営陣は、株主や従業員の利益も考慮しながら、最適な出口戦略を慎重に検討することが求められます。
他の成長ステージとの違いを理解する
シードステージとの違い
シードステージは起業前または起業直後の段階を指し、事業アイデアやコンセプトのみが存在する初期段階です。従業員規模は3人から5人程度と最小限で、具体的な製品やサービスはまだ実現していません。
資金調達はエンジェル投資家やシードアクセラレーターから数百万円から数億円程度となり、レイターステージの数十億円規模とは大きく異なります。シードステージでは事業の実現可能性そのものが問われるのに対し、レイターステージでは既に確立された事業の拡大戦略が焦点となります。

アーリーステージとの違い
アーリーステージは起業直後で事業が軌道に乗るまでの段階を指します。従業員規模は5人から20人程度に拡大し、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の達成を目指している状態です。
この段階ではまだ赤字が続いており、シリーズAからシリーズBの投資ラウンドで数億円から数十億円程度の資金調達を行います。アーリーステージが製品の市場適合性を証明する時期であるのに対し、レイターステージは既に市場での地位を確立し、安定収益を実現している点が大きな違いです。

ミドルステージとの違い
ミドルステージは事業が本格的に成長し始めた段階で、単月黒字化を達成または見込める状態です。従業員規模は20人以上となり、事業のスケール拡大に注力します。
資金調達はシリーズC以降で数十億円規模となり、レイターステージと金額面では近くなります。しかし、ミドルステージではまだ単年での黒字化には至っていないケースが多く、グロース人材の大量採用など攻めの投資が中心です。
一方、レイターステージでは単年黒字化を達成し、組織の安定化やIPO準備といった守りの体制構築にも重点が置かれます。事業の拡大だけでなく、イグジット戦略の具体化という点で、ミドルステージとは明確に異なるフェーズといえます。

まとめ
レイターステージは、スタートアップが安定的な収益基盤を確立し、イグジットを具体的に検討する最終段階です。単年での黒字化を達成し、従業員数30人以上の組織規模へと成長したこの時期には、数十億円規模の資金調達が可能になります。
この段階で求められるのは、管理部門の強化やIPO準備体制の構築といった組織の成熟化です。事業拡大だけでなく、ガバナンス体制の整備や内部統制の構築により、上場企業としての基盤を整える必要があります。
IPOとM&A、いずれのイグジット戦略を選択するにしても、市場環境や自社の成長曲線を見極めた適切なタイミングの判断が重要です。レイターステージの特性を理解し、計画的に準備を進めることで、企業価値を最大化したイグジットの実現につながるでしょう。
本記事が参考になれば幸いです。

