シリーズCとは?スタートアップのイグジット前の大型資金調達の知識

この記事でわかること
  • シリーズCとは
  • シリーズCの特徴と他の投資ラウンドとの違い
  • シリーズCで調達できる資金規模と期間
  • シリーズCにおける資金調達方法
  • シリーズCの評価基準と投資家が重視するポイント

スタートアップがシリーズCの段階に到達することは、一つの大きな節目です。プロトタイプから始まった事業が顧客に認められ、安定した黒字経営を実現し、いよいよIPOやM&Aといったイグジットを視野に入れる段階へと成長しました。

この段階での資金調達は、単なる運転資金の確保ではありません。数億円から数十億円という大型の資金を調達し、グローバル展開、競合買収、新規事業開発など、企業価値を最大化するための戦略的投資を実行する局面です。

しかし、シリーズCには特有の難しさがあります。投資家からの評価基準が厳格化し、財務指標での定量評価が中心となります。また、イグジット戦略の明確化も求められ、経営の舵取りはより複雑になります。

本記事では、シリーズCの基本的な理解から、7つの資金調達方法、投資家が重視するポイント、イグジットまでの戦略、そして成功のための実践的なポイントまで、スタートアップ経営者が知っておくべき知識を体系的に解説します。

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目次

シリーズCとは

投資ラウンドにおけるシリーズCの位置づけ

シリーズCは、スタートアップの成長段階を示す投資ラウンドの一つで、黒字経営が安定化し、IPOやM&Aといったイグジットを具体的に検討し始める段階を指します。明確な定義は存在しないものの、一般的にはシリーズA、Bを経て事業が成熟期に入り、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)を達成した企業が該当します。

この段階の企業は、すでに顧客基盤を確立し、安定した売上と利益を計上できる体制が整っています。市場での競争力も実証されており、事業の将来予測の精度が格段に向上している状態です。そのため、財務データに基づいた定量的な企業評価が可能となり、投資家との交渉も具体的な数値を基に進められます。

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シリーズCで資金調達を行う目的

シリーズCでの資金調達は、単なる運転資金の確保ではなく、より戦略的な目的を持っています。主な資金使途として、国内外への事業展開、新規事業の立ち上げ、競合他社の買収、技術開発への大型投資などが挙げられます。

すでに収益が安定している企業でも、市場環境の急激な変化に備えたリスクヘッジや、競争優位性を維持するための先行投資として資金調達を実施するケースが多く見られます。特に、グローバル展開を視野に入れた場合、現地法人の設立や人材採用、マーケティング投資など、数十億円規模の資金が必要となることも珍しくありません。

このように、シリーズCは企業価値を最大化し、成功裏にイグジットを実現するための重要な転換点として位置づけられています。

シリーズCの特徴と他の投資ラウンドとの違い

シリーズA・Bとの比較

シリーズAは、プロトタイプが完成し製品・サービスの提供を開始した段階で、まだ赤字経営が一般的です。調達額は数千万円から数億円程度で、主にプロダクトの改良と初期の顧客獲得に資金を投下します。投資家は将来性を重視し、ビジネスモデルの検証段階として評価します。

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シリーズBでは、一定の売上が立ち始め、ビジネスが軌道に乗り始めた段階です。調達額は数億円から十数億円程度で、販売促進や人材採用、設備投資など事業拡大に向けた投資が中心となります。まだ赤字の企業も多く、成長速度と市場シェア獲得を重視する段階です。

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これに対しシリーズCは、黒字化を達成し経営が安定している点が最大の特徴です。売上高や利益率など財務指標での評価が可能となり、投資家との交渉も具体的な数値に基づいて行われます。企業価値の算定も、将来の期待値だけでなく現在の収益力を反映したものとなります。

シリーズD以降への発展

シリーズCを経てもなお資金調達を続ける企業は、シリーズD、E、Fと段階を進めることがあります。シリーズD以降は、IPOやM&Aの実現に向けた最終準備段階として、上場準備チームの組織化や内部統制の強化、海外展開の加速などに資金を活用します。

メルカリはシリーズDまで、スマートニュースはシリーズFまで資金調達を実施し、それぞれの成長戦略に応じた大型調達を成功させました。CAMPFIREのように、シリーズEで30億円を調達し、グループ全体の事業基盤強化を図る例も見られます。

シリーズCは、単なる成長段階の一つではなく、企業が真の意味で事業として確立し、次なる飛躍に向けた戦略的な意思決定を行う重要な転換点として位置づけられます。

シリーズCで調達できる資金規模と期間

資金調達額の相場と決定要因

シリーズCにおける資金調達額は、一般的に数億円から数十億円規模となります。国内では10億円から30億円程度が中央値となることが多く、グローバル展開を視野に入れた企業では50億円を超える大型調達も珍しくありません。2021年のスマートニュースによる251億円の調達は、国内スタートアップの1ラウンドあたりの調達額として過去最大級の事例となりました。

調達額は、企業の成長戦略、市場規模、競争環境、既存投資家の意向などによって大きく左右されます。特に海外展開や大型M&Aを計画している企業は、より多額の資金を必要とする傾向があります。一方で、すでに黒字化を達成し安定的な収益を上げている企業の中には、株式の希薄化を避けるため、あえて調達額を抑制するケースも見られます。

重要なのは、調達額の大きさそのものではなく、事業計画に対する適正規模の見極めです。過度な調達は企業価値の希薄化を招き、将来のイグジット時のリターンに影響を与える可能性があります。

資金調達にかかる期間と準備

シリーズCの資金調達期間は、準備段階を含めて6ヶ月から1年程度が一般的です。シリーズA、Bと比較すると、企業の信用力が高まっているため交渉自体はスムーズに進む傾向がありますが、調達額が大きくなる分、デューデリジェンスも詳細かつ慎重に行われます。

VCやCVCからの出資の場合、初回面談から最終契約まで3〜6ヶ月程度で完了することが多い一方、PEファンドやシンジケートローンを活用する場合は、より複雑な審査プロセスを経るため1年近くかかることもあります。

効率的な資金調達を実現するには、財務諸表の整備、事業計画の精緻化、バリュエーションの根拠となるデータの準備など、事前準備が不可欠です。特にイグジット戦略を明確に示すことで、投資家との交渉を有利に進められる可能性が高まります。

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シリーズCにおける資金調達方法

エクイティファイナンスの選択肢

VCやCVCからの出資は、シリーズCで最も一般的な資金調達方法です。複数のVCから同時に調達することで数十億円規模の資金を確保でき、返済義務もありません。ただし、出資比率が高まるほど経営への関与も強くなる点に注意が必要です。

PEファンドは、3〜5年でのイグジットを前提に大型出資を行います。短期間で多額の資金調達が可能で、経営改善やM&Aの支援も受けられますが、株式の過半数を取得されることが多く、経営の自由度は制限されます。

事業会社からの出資も有力な選択肢です。資金だけでなく、販路拡大や技術提携などのシナジー効果が期待できますが、競合他社からの資金調達が困難になる可能性があります。

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デットファイナンスと代替手段

プロパー融資は、信用保証協会を介さない銀行からの直接融資です。シリーズCの企業なら審査に通りやすく、金利も比較的低く設定されます。ただし、事業計画の妥当性や返済能力を厳格に審査されます。

シンジケートローンでは、複数の金融機関から同一条件で融資を受けられます。一度に数十億円規模の調達が可能ですが、アレンジメントフィーなど通常の融資にはない手数料が発生します。

制度融資は、地方自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資で、審査基準が比較的緩く、長期返済が可能です。ただし、地域によって条件が異なり、手続きに時間がかかることがあります。

ファクタリングは、売掛債権を即座に現金化する方法で、最短即日での資金調達が可能です。キャッシュフローの改善に有効ですが、手数料が高額になる傾向があります。

各手法にはメリット・デメリットがあるため、自社の財務状況、成長戦略、イグジット計画を総合的に判断し、最適な組み合わせを選択することが重要です。複数の手法を併用することで、リスク分散と調達条件の最適化を図ることも可能です。

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シリーズCの評価基準と投資家が重視するポイント

財務指標による定量的評価

シリーズCでは、投資家の評価基準が大きく変化します。シリーズA、Bで重視された将来性や成長ポテンシャルに加え、実際の財務パフォーマンスが厳格に評価されます。売上高成長率、営業利益率、EBITDA、顧客獲得コスト(CAC)、顧客生涯価値(LTV)など、具体的な数値指標が投資判断の中心となります。

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特に重要なのは、単月黒字化から通期黒字化への移行実績です。安定的に利益を創出できる収益構造が確立されているか、売上の再現性は高いか、キャッシュフローは健全かといった点が詳細に分析されます。投資家は、これらの指標から企業価値を算定し、類似企業との比較を通じて妥当な投資条件を検討します。

また、ユニットエコノミクスの健全性も重視されます。顧客一人あたりの収益性が確保され、規模拡大に伴って収益性が向上する構造になっているかは、将来の成長可能性を判断する上で極めて重要な要素です。

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PMF達成度と市場ポジション

投資家が最も注目するのは、PMFの達成度合いです。製品やサービスが市場ニーズに的確に応えているか、顧客からの支持は安定しているか、リピート率や解約率はどの程度かといった指標から、事業の持続可能性を評価します。

市場におけるポジショニングも重要な判断材料となります。競合優位性は明確か、参入障壁は構築できているか、市場シェアの拡大余地はあるかといった観点から、企業の成長ポテンシャルを見極めます。特に、ネットワーク効果やスイッチングコストの高さなど、競争優位性を維持できる要因の有無は投資判断に大きく影響します。

経営チームの実行力と組織体制の成熟度も評価対象です。過去の実績、業界での評判、主要メンバーの離職率、ガバナンス体制の整備状況などから、イグジットまで安定的に事業を成長させられるかを判断します。明確なイグジット戦略とその実現可能性も、投資家が最終的な投資判断を下す上での重要な要素となります。

シリーズCからイグジットまでの戦略

IPOとM&Aの選択基準

シリーズCの企業が直面する最も重要な意思決定の一つが、IPOとM&Aのどちらを選択するかです。IPOは企業の独立性を維持しながら、資本市場から継続的に資金調達できる道を開きます。創業者や初期投資家にとってのリターンも大きく、企業ブランドの向上や優秀な人材の採用にも有利に働きます。しかし、上場準備には2〜3年の期間と数億円のコストがかかり、純資産額や利益額など厳格な上場基準を満たす必要があります。

M&Aは、買い手企業さえ見つかれば比較的短期間でイグジットを実現できます。赤字企業や規模の小さい企業でも、技術力や顧客基盤に価値があれば高額での売却が可能です。買収後のシナジー効果により事業の成長が加速する可能性もあります。ただし、経営権を失うことになり、創業者のリターンもIPOと比較すると限定的になる傾向があります。

選択の決め手は、創業者のビジョン、事業の成長性、市場環境、既存投資家との契約条件など複数の要因を総合的に判断することです。最近では、戦略的にM&Aを選択し、買収企業の一部門として更なる成長を目指すケースも増えています。

イグジットに向けた準備とタイムライン

イグジットの準備は、シリーズCの資金調達と同時に開始することが理想的です。IPOを目指す場合、内部統制の構築、監査法人の選定、主幹事証券会社の決定など、本格的な上場準備に18〜24ヶ月程度を要します。財務報告体制の整備、コーポレートガバナンスの強化、開示体制の構築など、上場企業として求められる体制を段階的に整備していきます。

M&Aの場合は、企業価値を最大化するための事業改善と、買い手候補へのアプローチが中心となります。財務アドバイザーの選定、企業価値評価、買い手候補のリストアップ、交渉戦略の立案などに6〜12ヶ月程度かかることが一般的です。

重要なのは、複数のシナリオを想定した柔軟な戦略を持つことです。市場環境の変化や事業の成長速度に応じて、IPOからM&Aへ、またはその逆への方針転換も視野に入れた準備を進めることで、最適なタイミングでのイグジットが可能となります。

シリーズCを成功させるための実践的ポイント

資金調達前の準備と体制整備

シリーズCの成功は、資金調達を開始する前の準備段階でほぼ決まります。まず財務データの精度向上が不可欠です。月次決算の迅速化、管理会計の導入、KPIダッシュボードの構築など、投資家が求める情報を即座に提供できる体制を整えることで、交渉を有利に進められます。特に、過去3年分の監査済み財務諸表と、向こう3年間の詳細な事業計画は必須です。

経営チームの強化も重要な要素です。CFOやCOOなど、専門性の高い経営幹部の採用により、投資家からの信頼度が大きく向上します。取締役会の構成も見直し、独立社外取締役の招聘を検討することで、ガバナンス体制の充実をアピールできます。

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投資家との交渉戦略

シリーズCでは、投資家との交渉が複雑化します。複数の投資家を同時並行で検討することで、より良い条件を引き出すことが可能です。ただし、既存投資家との関係性も考慮し、全体最適を図ることが重要です。リード投資家の選定は特に慎重に行い、資金力だけでなく、事業への理解度や提供可能な付加価値を総合的に評価します。

バリュエーションの設定では、類似企業の事例を徹底的に研究し、根拠のある企業価値を提示することが求められます。高すぎる評価は次回ラウンドでのダウンラウンドリスクを生み、低すぎる評価は既存株主の利益を損ないます。適正な範囲を見極め、柔軟に交渉することが成功のポイントとなります。

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最も重要なのは、資金調達を単なる資金確保の手段と捉えるのではなく、イグジットに向けた戦略的パートナーシップの構築と位置づけることです。投資家の専門性やネットワークを最大限活用し、企業価値向上につなげる視点を持つことで、シリーズCを真の成功に導くことができます。

まとめ

シリーズCは、スタートアップが真の意味で事業として確立し、次なる飛躍を目指す重要な転換点です。黒字経営の安定化とPMFの達成を基盤に、数億円から数十億円規模の資金調達を実行し、イグジットに向けた最終段階へと進みます。

成功のポイントは、適切な資金調達手法の選択と入念な事前準備にあります。VCやPEファンドからのエクイティファイナンス、金融機関からの融資など、7つの選択肢から自社の状況に最適な組み合わせを選ぶことが重要です。同時に、財務データの整備、経営チームの強化、明確なイグジット戦略の策定など、投資家が求める要件を満たす体制づくりが不可欠です。

シリーズCは単なる資金調達の一段階ではありません。企業価値を最大化し、創業者、従業員、投資家すべてのステークホルダーにとって最良の結果をもたらすための戦略的な意思決定の場です。本記事で解説した実践的なポイントを参考に、自社にとって最適なシリーズC戦略を構築し、成功裏にイグジットを実現していただければ幸いです。

本記事が参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

O f All株式会社の編集局です。ファイナンス・資本政策・IPO・経営戦略・成長戦略・ガバナンス・M&Aに関するノウハウを発信しています。

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