株式報酬制度とは?基礎から11種類の制度・選び方までわかりやすく解説
この記事でわかること
- 株式報酬制度の基本的な概要
- 株式報酬制度のメリット・デメリット
- 各株式報酬制度を理解するために抑えるべきポイント
- 株式報酬制度(9種類)・株価連動金銭報酬(2種類)の特徴
- 株式報酬制度の選び方と事例
著者プロフィール
O f All株式会社
代表取締役
福地 悠太
主に上場企業に対するストック・オプションの設計・導入支援、エクイティ・ファイナンスに関するアドバイザリー業務、M&Aアドバイザリー業務等に従事。証券株式会社を経て、再びコンサルティング業に戻り、株式報酬制度の設計・導入支援、役員報酬制度の設計、指名報酬委員会の設置・運用に係る助言業務等を行う。
株式報酬制度とは、企業の業績や株価に連動して支給されるインセンティブ報酬の一種で、自社の株式または株式を購入できる権利が報酬として付与されます。
近年では、優秀な人材の確保やモチベーション向上、ガバナンス強化など、様々なメリットを享受できる施策として、上場企業を中心に導入が進んでいます。
本記事では株式報酬制度の基本的な知識から主な種類、そして選定時のポイントまで解説していきます。
株式報酬制度とは?
株式報酬制度とは、「企業が報酬として自社の株式や新株予約権を交付する報酬制度」です。
報酬の形態は主に現金を交付する「現金報酬」と株式や新株予約権を交付する「株式報酬」の2つに分類されます。株式報酬は、一般的な現金報酬と比較して、中長期的なインセンティブとして機能しやすいなどの特徴があります。また、株価に連動させて現金報酬を支払う「株価連動金銭報酬」という報酬制度も存在します。
株式報酬制度のメリット
上場企業を中心に導入が進んでいる株式報酬制度ですが、背景にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
主な理由としては「モチベーションの向上」「優秀な人材の採用やリテンション」「コーポレートガバナンスの強化」などが挙げられます。
①モチベーションの向上
株式報酬は、企業の業績や株価に連動するため、受取者は中長期的な企業価値向上に向けて積極的に取り組むようになります。自社の株式を保有することで、株主と同じ目線で経営や業務に臨めるような効果が期待できます。
②優秀な人材の採用やリテンション
株式による報酬は、将来のリターンを期待できるため、特に成長フェーズの企業で優秀な人材を引き付け、定着させる手段としても活用されています。
③コーポレートガバナンスの強化
コーポレート・ガバナンス・コードにおいて、健全なインセンティブの一つとして機能するよう「中長期的な業績と連動する株式報酬の割合」について記載されていることもあり、株主目線での経営や健全な企業運営が促進されやすい株式報酬の導入が進んでいます。
株式報酬制度のデメリット
多くのメリットがある一方で、導入によるデメリットも存在するため注意が必要です。
主なデメリットとして挙げられるのが「株式の希薄化」と「設計・処理・運用の複雑さ」になります。
①株式の希薄化
株式報酬制度では、新たに株式を発行するため、既存株主の保有株式の価値が希薄化するリスクがあります。特に、多額の株式報酬を付与する場合、希薄化の影響が大きくなる可能性があるため慎重な検討が必要です。
②設計・処理・運用の複雑さ
株式報酬制度は、企業の目的や状況に合わせて設計する必要がありますが、適切な設計には多くの要素を検討する必要があります。報酬の種類や付与条件、業績連動指標の選定、会計上のインパクト、課税関係など様々な要素を考慮しなければならないため、制度設計に時間と労力がかかることがあります。特に、会計処理や税務上の取り扱いが複雑になる場合があり、中でも業績連動型の株式報酬制度では、業績条件の達成度に応じて費用計上額が変動する場合もあるため、適切な会計処理などが求められます。
株式報酬制度を理解するためのポイント
前項では株式報酬制度のメリット・デメリットについて解説させていただきました。次に、株式報酬制度を理解していくために抑えるべきポイントを解説していきます。
これらの項目は株式報酬制度を理解する上でも、各制度の特徴を捉える上でも重要ポイントとなるため、ご参考にしていただければ幸いです。
ポイントとして挙げられるのは「報酬の型」「条件」「交付時期」「付与対象者」「企業フェーズ」「株主としての権利」「課税の種類」「課税の時期」「費用計上」「キャッシュイン/アウト」「意思決定機関」となります。それぞれのポイントに以下のような選択肢があります。
これらのポイントと選択肢について、次項以降でそれぞれ解説していきます。
報酬の型
「報酬の型」とは付与対象者へどのようにインセンティブを出すかの型となります。主な型として挙げられるのが「フルバリュー型」と「キャピタルゲイン型」となります。
フルバリュー型
株式そのものまたは株価相当額の金銭を報酬として付与します。そのため、付与対象者の報酬額が株価と完全に連動します。付与対象者は株式の価値の維持・向上を意識し、業績に対するモチベーションの向上が期待できます。また、仮に付与時から株価が下落した場合においても報酬として機能するため、一定の効果を期待できます。
キャピタルゲイン型
付与対象者の報酬額が一時点からの株価上昇分(株価の値上がり益)に連動します。代表的な制度であるストック・オプションであれば、将来の株式の時価とストック・オプションの行使価額の差が報酬となります。株価が大きく上昇した場合、付与対象者の得られる報酬額が大きくなるため、これから株価が大きく伸びる可能性がある成長フェーズの企業の導入が多いです。
条件
「条件」とはどのような条件を達成すれば、報酬等の権利確定・制限解除等がされるかを定めるものとなります。主な条件として挙げられるのが「業績条件」と「在籍条件」です。
在籍条件
一定期間の在籍を条件とするものです。通常2〜5年程度の期間が設定されます。この条件は、優秀な人材の長期的な定着を促進する効果があります。
業績条件
企業の業績目標達成を条件とするものです。例えば、売上高や利益額などの財務指標、あるいは株価などが用いられます。この条件は、経営陣に対して業績拡大・企業価値向上へのインセンティブを与える効果があります。
交付時期
「交付時期」とは、株式を「事前交付」または「事後交付」とするタイミングに関するポイントです。
事前交付
条件達成前に株式を交付する方式です。この方式では、株式は即時に付与されますが、一定期間の譲渡制限などが付されます。条件未達成の場合、会社が株式を無償で取得します。事前交付型は、交付時点から議決権や配当権が付与されるため、株主との利害関係の一致や役職員の早期持分増加を図りやすいメリットがあります。
事後交付
条件達成後に株式を交付する方式です。この方式では、条件達成時まで実際の株式は交付されず、達成度に応じて交付株数が決定されます。事後交付型は、業績連動性を高めやすく、また業績条件未達(企業価値が向上していない)場合に株式の希薄化を抑制できるメリットがあります。
付与対象者
「付与対象者」とは株式を誰に付与するのかというポイントです。ここでは代表的な例として、役員に対しての付与と従業員に対しての付与でどのような考え方の違いが生まれるのかを解説します。
役員へ付与する時の考え方
役員(通常、取締役や執行役員が対象)への株式報酬は、経営陣と株主の利害を一致させ、中長期的な企業価値向上へのインセンティブを与えることが主な目的です。業績連動型の報酬設計が多く、企業の中長期経営計画と連動させることが一般的で、コーポレートガバナンス・コードの観点からも推奨されています。なお、社外取締役や監査等委員である取締役、監査役への株式報酬は、設計によってはガバナンス機能を低下させるリスクもあるため、株式報酬の付与の判断は慎重に行う必要があります。
従業員へ付与する時の考え方
従業員への株式報酬は、優秀な人材の獲得・定着や、従業員のモチベーション向上が主な目的です。全従業員を対象とする場合もありますが、管理職以上や特定の重要ポストの従業員に限定することも多いです。勤続年数や個人業績、今後のパフォーマンスへの期待に応じて付与するケースが一般的で、従業員の帰属意識を高め、会社の成長が自身の利益につながる意識を醸成します。
企業フェーズ
「企業フェーズ」によって、株式報酬制度の選択肢についても変化していきます。ここでは代表的な例として、「直近で上場予定企業」「上場企業」の2つのフェーズの企業について解説します。
直近で上場予定企業
IPO準備段階の企業では、上場後の株価上昇への期待を込めて株式報酬制度を導入することが多くなります。この段階では、上場時の株価インパクトも考慮し、既存株主の利益と従業員へのインセンティブのバランスを取ることが重要です。このフェーズでは上場後を意識した制度を検討し始める時期でもあります。また、上場審査を見据えて、制度の透明性や公平性を確保することも必要です。さらに、上場後の開示も考慮した制度設計が求められます。
上場企業
上場企業では、コーポレートガバナンス・コードへの対応や機関投資家からの要請も踏まえ、より洗練された株式報酬制度が求められ、中長期的な企業価値向上と連動した制度設計が一般的になります。業績連動型の報酬割合を高めることで、経営陣の責任を明確化し、株主との利害一致を図ることの重要度もより大きくなります。また、開示の充実も重要で、報酬決定プロセスの透明性確保や、KPIの設定根拠の説明なども意識する必要があります。一方で、株式の希薄化や会計上の費用計上の影響にも注意が必要です。状況に応じた定期的な制度の見直しも重要で、経営環境の変化に柔軟に対応して制度を改定していくことが求められます。
株主としての権利
「株主としての権利の有無」とは、付与された株式報酬そのものに「株主としての権利が有る」のか「株主としての権利が無い」のかというポイントになります。
株主としての「権利有り」
この場合、付与された株式報酬に対して、通常の株主と同様の権利が付与されます。主な権利には、議決権と配当受領権が含まれます。議決権により、株主総会での議案への投票権を持ち、会社の重要な意思決定に参加できます。配当受領権によって、会社の利益配分を受けることができます。
これらの権利が付与されることで、役員・従業員は株主と同じ立場に立ち、株主価値向上への意識がより高まりやすくなります。また、議決権行使を通じて経営への関与度が増すため、コーポレートガバナンスの向上にも寄与します。ただし、一定期間の譲渡制限が付されていることが多く、株式の売却には制限があります。この形態は主に事前交付型の株式報酬で見られます。
株主としての「権利無し」
この場合、報酬は株式そのものではなく、将来的に株式を受け取るまたは購入する権利(ユニットやオプション)が付与されます。そのため、付与時点では議決権や配当受領権といった株主の権利は発生しません。これにより、既存株主の権利の希薄化を最小限に抑えつつ、将来の株価上昇へのインセンティブを与えることができます。株主の権利がないため、当初は会社の意思決定への直接的な影響は限定的ですが、将来の株式取得への期待から、株主価値向上への意識は高まります。この形態は主に事後交付型の株式報酬やストック・オプションで見られます。権利確定後や権利行使後に初めて株主としての権利を得ることになります。
課税の種類
株式報酬の一連の流れにおいて関連する主な「課税の種類」について、ここでは「給与所得課税」と「譲渡所得課税」の2種類の課税について解説をしていきます。
給与所得課税
給与所得課税は、労働の対価として支払われる給与として認識される場合に適用されます。課税対象額は、課税時の株式の時価から取得価額を引いた金額となります。税率は累進課税で、最高税率は45%(住民税等を含めると約55%)に達します。給与所得は源泉徴収の対象となるため、会社側での事務負担が発生します。
また、株式報酬の場合、給与所得課税時には株式が現金化されていないため納税資金の確保が課題となることがあります。給与所得課税の時期は、報酬費用の損金算入と連動しているため、会社側の税務にも影響します。
譲渡所得課税
譲渡所得課税は、株式の売却時に適用される税金です。株式報酬制度において、付与された株式を売却する際に発生します。課税対象額は、売却価額から取得価額(給与所得課税が生じている場合は課税時の時価)を引いた譲渡益に対してかかります。税率は、原則として一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の分離課税となります。譲渡損失が発生した場合、他の株式等の譲渡益と損益通算できる点も特徴です。
ただし、株式報酬制度によっては、一定期間の譲渡制限が設けられていることがあり、すぐに売却できない場合もあります。譲渡所得は確定申告が必要となるため、納税者自身での手続きが求められます。
課税時期
株式報酬制度においては課税されるタイミングが制度によって1回~複数回存在します。
ここでは主な課税時期である「譲渡制限解除時」「株式交付時」「権利行使時」「株式売却時」について解説していきます。
譲渡制限解除時
事前交付型の株式報酬制度で見られる課税タイミングです。報酬として交付された株式の譲渡制限が解除された時点での課税となります。
その時の株価×交付株式数を給与所得額として課税されます。株価に連動するため、株価が大きく上昇している場合は高額な課税となる可能性があります。
株式交付時
事後交付型の株式報酬制度で見られる課税タイミングです。将来、株式の交付が受けられる権利であるユニットが付与された時点ではなく、付与される株式数が確定し交付された際に、交付時の株価に基づいて給与所得課税が発生します。
権利行使時
ストック・オプション等で見られる課税タイミングです。権利が確定し、実際にその権利を行使して株式を取得した時点で課税が発生します。ストック・オプションの場合、権利行使時の株価と権利行使価格との差額が課税対象となります。
株式売却時
株式を売却したタイミングで発生する課税です。ほとんどの株式報酬制度で発生し譲渡所得課税となります。
費用計上
株式報酬の各制度における会計上の費用計上について「費用計上が大きいパターン」と「費用計上が中程度のパターン」の両方の解説をしていきます。
大きい(フルバリュー型)
フルバリュー型に分類される株式報酬制度については、株式を交付する時点の時価に交付株式数を乗じた額が費用計上の総額となります。特に事後交付型の株式報酬制度においては、将来の株式交付時点の株価に基づいて費用計上額が変動するため、株価が大幅に上昇した場合などには想定以上の費用となる場合があり、留意が必要です。
中程度(キャピタルゲイン型)
キャピタルゲイン型であるストック・オプションについては、ストック・オプションの付与時点のオプション自体の公正価値にオプション交付数を乗じた額が費用計上の総額となります。オプションの公正価値は発行する会社によって異なりますが、概ね株価の30-60%程度になるケースが多いです。
キャッシュイン/キャッシュアウト
株式・報酬等の付与に伴い、会社側に「キャッシュイン」「キャッシュアウト」が生じることがあります。
キャッシュイン
株式等の発行に伴い、会社側にキャッシュインが生じることがあります。例えば、無償ストック・オプションは権利行使時に権利行使価格分のキャッシュインが生じます。その他にも有償ストック・オプションは発行時に発行価額分と権利行使時に権利行使価格分のキャッシュインが生じます。それ以外の制度ではキャッシュインが生じることはありません。
キャッシュアウト
株式・報酬等の付与に伴い、会社側にキャッシュアウトが生じることがあります。例えば、ファントムストック、SARなどの制度は権利確定後、報酬を金銭で支払う際にキャッシュアウトが生じます。RSU、PSUなどは権利確定後、納税資金としてユニットの一部を株式の時価相当の金銭で交付する設計の場合に生じることがあり、株式給付信託などの制度は信託財産を金銭として、当該金銭を原資として信託が自社株式を買い付ける設計の場合、信託設定時にキャッシュアウトが生じることがあります。それ以外の制度ではキャッシュアウトが生じることはありません。
意思決定機関
報酬として株式を発行する際に決議等の意思決定をする必要があります。ここでは「株主総会」と「取締役会」のパターンを解説していきます。
株主総会
未上場企業の場合には、報酬として株式等を発行しようとする場合、株主総会で当該株式等に関する募集事項の決定決議または募集事項の決定を取締役会に委任することの承認決議をとる必要があります。上場企業の場合には、役員に株式報酬を付与する際に、報酬として役員に株式等を付与すること、または株式として役員に報酬を付与するための報酬枠の承認決議をとる必要があります。また、役員以外に株式報酬を付与する場合でも、特に有利な条件で株式等を支給するのであれば、株式等の有利発行決議をとらなければなりません。
取締役会
上場企業の場合、株式等の募集事項の決定決議を取締役会で行う必要があります。また、ストック・オプションを募集引受形式で発行する場合には、割当承認決議もとることが必要です。
なお、未上場企業でも、株主総会で株式等の募集事項決定を取締役会に委任する決議をとった場合には、株主総会とは別に取締役会で募集事項決定決議をとらなければなりません。
主な株式報酬制度・株価連動金銭報酬 11種類を解説
株式報酬制度(9種類)と株価連動金銭報酬(2種類)の比較表
株式報酬制度を理解するためポイントを抑えた上で、次に株式報酬制度の主な種類について見ていきましょう。主に利用される株式報酬制度・株価連動型報酬(9種類+2種類)は以下の11種類となります。
それぞれに特徴がありますが、把握するにあたっては制度や設計が複雑なこともあり、理解しづらい点もあります。
本記事では先述した株式報酬を理解するためのポイントをもとに整理しながら、それぞれの株式報酬制度について解説していきます。
株式報酬制度・株価連動金銭報酬について理解するための重要な項目を整理した比較表が上記となります。これらの項目をもとに次項から、それぞれの株式報酬制度の特徴について捉えていっていただければ幸いです。
譲渡制限付株式(RS)
譲渡制限付株式(RS:Restricted Stock)は、一定期間の譲渡制限(継続勤務等の条件)が付された現物株式を付与する報酬制度です。譲渡制限期間中は株式を自由に売却することができません。譲渡制限期間の開始から終了時まで継続勤務することで譲渡制限が解除され、付与対象者は株式を売却できるようになります。条件が満たせなかった場合は会社側が株式を無償取得します。
譲渡制限付株式(RS)における一連の流れと特徴は以下となります。
🔗「譲渡制限付株式(RS)」について詳しく知りたい方はこちら
譲渡制限付株式ユニット(RSU)
譲渡制限付株式ユニット(RSU:Restricted Stock Unit)は、一定期間の継続勤務等の条件付で株式が交付される権利(ユニット)を付与する報酬制度です。このユニットは、将来的に株式を得る権利を表しますが、この時点では実際の株式は交付されません。付与時から定めた一定期間終了時まで継続勤務することでユニット数に応じた株式を受け取ることができます。条件が満たせなかった場合は会社側がユニットを没収し、株式の交付はされません。
譲渡制限付株式ユニット(RSU)における一連の流れと特徴は以下となります。
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パフォーマンス・シェア(PS)
パフォーマンス・シェア(PS:Performance Share)は、事前に設定した業績目標等(売上高・利益額など)による譲渡制限が付された現物株式を付与する報酬制度です。譲渡制限期間中は株式を自由に売却することができません。事前に設定した業績目標等を達成することで譲渡制限が解除され、付与対象者は株式を売却できるようになります。条件が満たせなかった場合は会社側が株式を無償取得します。
パフォーマンス・シェア(PS)における一連の流れと特徴は以下となります。
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パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)
パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU:Performance Share Unit)は、事前に設定した業績目標等(売上高・利益額など)が達成された際に株式が交付される権利(ユニット)を付与する報酬制度です。このユニットは、将来的に株式を得る権利を表しますが、この時点では実際の株式は交付されません。事前に設定した業績目標等の達成で権利が確定し、ユニット数に応じた株式を受け取ることができます。条件未達の場合は会社側がユニットを没収し、株式の全部または一部は交付されません。
パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)における一連の流れと特徴は以下となります。
🔗「パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)」について詳しく知りたい方はこちら
株式給付信託(株式交付信託)
株式給付信託とは信託を通じて対象者へ自社株式を給付する報酬制度です。給付に際しては対象者へポイントを付与し、信託期間終了時等に累積したポイント数に見合う株式を交付します。ポイント付与に関しては付与の基準となる株式交付規程(在籍年数・役職・個人や企業業績など)を制定し、その規程に基づいてポイント付与を行っていきます。RSU・PSUは事前にユニットを付与するのに対して、株式給付信託では企業が株式を信託にプールした上で規程に沿ってポイントを交付していく特徴があります。上場企業の中でも従業員数が多い企業で選択されやすい制度です。
株式給付信託(株式交付信託)における一連の流れと特徴は以下となります。
株式報酬型ストック・オプション(1円ストック・オプション)
はじめに、ストック・オプションとはあらかじめ定めた価額(権利行使価額)で自社の株式を取得できる権利(新株予約権)を付与する制度です。付与対象者はストック・オプションの権利を行使し、株式を取得後に売却することでキャピタルゲインを得ることができます。
株式報酬型ストック・オプションでは、発行のタイミングで付与対象者による金銭の払い込みを必要とせず、権利行使価額を1円に設定することから、権利行使が可能な期間を長期間に設定しながら徐々に付与していき、退職後に権利行使を可能とすることで退職金として利用するケースが多いです。
株式報酬型ストック・オプション(1円ストック・オプション)における一連の流れと特徴は以下となります。
🔗「株式報酬型ストック・オプション(1円ストック・オプション)」について詳しく知りたい方はこちら
無償税制適格ストック・オプション
無償税制適格ストック・オプションは、ストック・オプションの種類のひとつとなります。発行のタイミングで付与対象者による金銭の払い込みを必要とせず、適格要件を満たしていれば課税のタイミングが1回のみ(株式売却時の譲渡所得課税)と付与対象者の税負担が少ないことから、株価の大きな値上がり幅が期待できる場合において、より強いインセンティブの効果を期待することができます。
無償税制適格ストック・オプションにおける一連の流れと特徴は以下となります。
なお、ストック・オプション税制が適用される無償税制適格ストック・オプションを発行するためには以下の条件を満たす必要があります。
税制適格要件
※2024年10月現在
※1社外高度人材に対するストックオプション税制は、下記リンクをご参照ください。
参考:経済産業省 ストック・オプション税制
参考:経済産業省 社外高度人材に対するストック・オプション税制
🔗「無償ストック・オプション」について詳しく知りたい方はこちら
有償ストック・オプション
有償ストック・オプションは、無償型とは異なり、発行時に付与対象者がオプションの対価として金銭を払い込む必要があります。この払い込み金額(発行価額)は、ストック・オプションに付された業績や株価などの条件に基づいて決定されます。条件を設定することで、オプション自体の価値を下げ、払込金額を低く抑えることが可能です。また、有償ストック・オプションは報酬ではなく適正な時価で購入している有価証券とみなされるため、行使時に課税されることはありません。
有償ストック・オプションにおける一連の流れと特徴は以下となります。
🔗「有償ストック・オプション」について詳しく知りたい方はこちら
コール・オプション(譲渡予約権)
コール・オプション(譲渡予約権)は、株主が保有する株式を付与対象者が一定の条件の下で購入できる権利です。取引の主体が発行会社であるストック・オプションとは異なり、株式を保有する株主と相対取引することが特徴です。新規で株式発行はしないため、希薄化を避けることができる一方で、株主から株式を譲渡するため、譲渡した株主の持分は直接的に減少します。
コール・オプション(譲渡予約権)における一連の流れと特徴は以下となります。
ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)
ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)は、あらかじめ株価を設定(権利を付与した時点での株等)し、権利確定の時にあらかじめ設定した株価と権利確定時の株価の差額を、現金等で支給する株価連動金銭報酬です。仮に権利確定時の株価があらかじめ設定した株価を下回った場合は報酬が受け取れなくなります。付与対象者は差額分が報酬となるため、業績・株価向上のためのインセンティブとなります。
ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)における一連の流れと特徴は以下となります。
🔗「ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)」について詳しく知りたい方はこちら
ファントムストック
ファントムストックは、定めた一定の株数分の権利を付与し、権利確定の時には、その株数に権利確定時の株価を乗じた額を現金等で支給する株価連動金銭報酬です。SARはキャピタルゲイン型であるのに対してファントムストックはフルバリュー型の株価連動金銭報酬となります。
ファントムストックにおける一連の流れと特徴は以下となります。
株式報酬制度の選び方
ここまで、9種類の株式報酬制度・2種類の株価連動金銭報酬について解説してきました。
最後に株式報酬制度を選択していく際にどのようなポイントをもとに検討していけばよいのかを、考慮されやすい主なポイントにフォーカスして、解説していきます。
株式報酬制度 選定時の主なポイント
株式報酬制度を選択していく際に考慮されやすいポイントは以下になります。
- 自社のフェーズ
成長/成熟のいずれのフェーズかというポイントです。一般的に成長フェーズであればキャピタルゲイン型、成熟フェーズであればフルバリュー型の制度が適している可能性が高くなります。
- 付与対象者の属性
どういったレイヤー・属性に報酬を付与するかというポイントです。一般的には役員やハイレイヤーであれば業績連動型が受け入れやすく、一般従業員層は業績連動型より在籍条件型が選択されやすいです。
- 条件(効果)
どのような条件達成によって譲渡制限解除・権利確定等とするかというポイントです。設定した条件によって、もたらすインセンティブの効果が変わってきます。
- 会計上の影響
費用計上の規模と費用認識時期がいつになるかというポイントです。
- 課税
最終的に付与対象者にどのくらいの課税があるかというポイント。株価の上昇想定と課税の種類から制度ごとの最終利益見込みを比較して検討します。
- コーポレートガバナンス
上場企業としてのガバナンスや少数・既存株主の利益を害する内容にならないかというポイントです。
株式報酬制度 選定の例
前述の株式報酬制度の選択時に考慮されやすいポイントにおいて、企業の状況や要望から、どのような株式報酬制度が選択されやすいのかの事例を紹介していきます。
実際には考慮する点はこちら以外にも多々あるため、あくまで参考例としてご認識いただけますと幸いです。
選定例① 成熟フェーズ・対象者は役員・在籍条件
選定例② 成熟フェーズ・対象者は役員・業績条件
選定例③ 成長フェーズ・対象者は役員と従業員
株式報酬制度の事例
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株式報酬制度・株価連動金銭報酬のお悩みをご相談ください
ここまで、株式報酬制度・株価連動金銭報酬について、基礎的な内容から理解するために抑えておくべきポイント・11種類の制度・選び方までを解説してきました。
本記事の内容が株式報酬制度・株価連動金銭報酬を検討している皆さまの参考になれば幸いです。
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